2023/11/4 JDDWイブニングセミナー

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 教授 松岡 克善 先生

松岡先生がSDMの実際を講演してくれました

 

炎症性腸疾患(クローン病 潰瘍性大腸炎)の病態は多彩でひとりひとり異なり 治療を決定するさいにはその患者さんの病気のこれまでの経過 ライフステージのどこにいるかなども考慮することが必要です。100%有効な薬は現在存在しないうえに お薬の品目数が増加し 医学的には治療を1つに決定することはできません。

ランダムに決めるのは臨床試験、医師が決めるのはinformed consentですが 一昔前のpaternalism、患者さんに決めてもらうのは医療者としては責任が欠けています。患者さんと医師と一緒に治療を決定するのがShared Decision Making(SDM)です。

実臨床においてはSDMするにしてもお薬の数が増えたので選択肢が多すぎて患者さんは決めかねてしまします。中等症では より良くなる方をとるか 副作用が少ない方をとるか迷ってしまいます。行動経済学の分野では プロスペクト理論という考え方があり 人間は利益のうれしさより損失の悲しさにより敏感であると言うことが知られています。人間は困ったときは論理的に考え行動するわけではありません。そこでNudge:肘でつつくという意味ですが 医師の側でどのお薬がよいか提案して 行動(お薬の決定)を何となく後押ししてあげるのがよいと思われます。