20230216 IBD Forum in 京滋・奈良

クローン病の病態と最新治療

 

上記の演題で 公立甲賀病院 院長 辻川 知之 先生が司会をされ 滋賀医科大学 消化器内科 教授 安藤 朗先生が講演してくれました。

 

潰瘍大腸炎は上皮細胞 間質細胞の異常が病態の主態で、好酸球 形質細胞の多数の浸潤を大腸の炎症局所に認めます。

骨髄由来の共通前駆細胞は胸腺において機能の異なるT細胞へと分化する。胸腺細胞は、胸腺からCD4+ T細胞あるいはCD8+ T細胞として全身循環に入る。これらT細胞は血液やリンパ系を循環し、二次リンパ組織(リンパ節、脾臓、粘膜関連リンパ組織)において、樹状細胞により提示を受けた特異的抗原に遭遇すると活性化され、エフェクターT細胞に分化する。エフェクターCD8+ T細胞は、ウイルス抗原などを認識して活性化し、感染細胞を排除する。このため、エフェクターCD8+ T細胞は細胞傷害性T細胞とも呼ばれる。

CD4+ T細胞は、発現するサイトカインによって、Th1, Th2 およびTh17細胞に分類される。このうちTh1細胞は、感染部位に移動した後、IFN-γを分泌し、マクロファージによる病原体の取り込みや殺傷能を増強する。Th17は粘膜組織において、好中球を活性化することで、粘膜面の感染防御に働く。一方、Th2細胞は、二次リンパ組織に留まり、抗原特異的なナイーブB細胞の活性化とクラススイッチを促す。さらにCD4+ T細胞サブセットの中には、抗原特異的に免疫応答を抑制する制御性T細胞(Treg)も存在する。Tregは自己免疫疾患の発症を防いでいる。Tregによる免疫制御は、免疫寛容の成立や免疫恒常性の維持において重要な役割を担っている。

 

クローン病の病態はCD4陽性T細胞:Th1, Th2, Th17, Tregが病態を構成しています。Th17細胞はp19抗体のターゲットです。クローン病には食事抗原、腸内細菌の影響によりTh1, Th17細胞の持続活性化が起こっています。本来ヘルパーTリンパ球の寿命は短いのですが膜型TNFαの活性化によりアポトーシスを回避してヘルパーTリンパ球の寿命が長くなり炎症の増悪に繋がります。Th1細胞はIFNαを介してマクロファージ、樹状細胞を活性化します。IL12を抑制するとCD8陽性T細胞が抑えられます。CD8陽性T細胞は癌免疫に関与しているのでIL12の抑制のしすぎは癌免疫に対する影響が懸念されます。IL23はTh17細胞の増殖を強力に誘導します。自然免疫に関与するリンパ球は小腸に多く分布しIL23で活性化されます。

スキリージは抗薬物抗体産生が最も少ないので一度有効になると効果が長持ちします