2023/2/16 IBD Forum in 京滋・奈良

札幌医科大学 消化器内科 教授 仲瀬 裕志 先生が炎症性腸疾患の治療のメカニズムを講演してくれました

 

潰瘍性大腸炎では 微生物による上皮粘膜のバリア機能の障害が起こっています。そのため大腸粘膜局所で抗炎症作用を発揮する5-ASA製剤が治療の基本になります。

また人において炎症の初期はTh1細胞とTh17細胞が炎症の主態ですが 慢性期になるとTh17細胞は引き続き関与していますがTh1細胞からTh2細胞に炎症の主態が変化します。

潰瘍性大腸炎では多くの炎症性腸疾患発現遺伝子が絡んでいます。それに対しクローン病は絡んでいる遺伝子数が少なくIL15、TNFSF10などの遺伝子がその主態です。

現在の炎症性腸疾患治療のメカニズムは大きく3つに分類されます。

①抗サイトカイン治療:潰瘍性大腸炎、クローン病発症に関連するサイトカインをブロックして治療します。その代表は抗TNFα抗体:レミケード ヒュミラ シンポニーです。またステラーラはIL12とIL23をブロックし結果としてTh1細胞とTh17細胞の働きが抑制されます。

②炎症細胞浸潤抑制療法:エンタイビオ カログラ;血管やリンパ管から炎症細胞が腸管に浸潤するのを防ぎます。白血球除去療法はCD14発現細胞, CD16発現細胞, TNFα産生細胞を取り除きます。

③細胞内伝達阻害療法:ゼルヤンツ ジセレカ リンヴォック;細胞内伝達経路であるJAK-STAT経路をブロックして新たなサイトカイン産生を防ぎます。

 

アザチオプリン:イムラン、アザニン、ロイケリン;は活性化したT細胞に取り込まれてT細胞のアポトーシスを惹起します。