2023/02/27 リンヴォックインターネットライブセミナー
進化する潰瘍性大腸炎治療
-リンヴォックをどう活かすか-
東北大学病院 消化器内科 助教 志賀 永嗣 先生が上記の演題で講演してくれました。
近年 分子標的薬の登場、その使用の増加により潰瘍性大腸炎 クローン病の手術率は低下し予後は改善されています。また分子標的薬の使用により潰瘍性大腸炎では進行癌の発生率が低下してきたとの報告もあります。しかし分子標的薬の継続率は高くなく 1年で67% 3年で33%です。潰瘍性大腸の方がクローン病より低い傾向です。2次無効や副作用のため実臨床では分子標的薬を次々に変更しているのが実状のようです。
寛解導入の早さではステロイド>レミケード>ゼルヤンツ>ステラーラ>ヒュミラ>エンタイビオ>チオプリンです。ステロイド抵抗性入院重症例ではレミケードかプログラフを投与しますが長期の維持率ではレミケードがプログラフよりすぐれています。プログラフは急速飽和しても血中濃度が上昇しない場合と維持治療がイムランになることがその理由とおもわれます。
抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)は寛解導入 寛解維持に使用でき 安全性もまずまずですが 継続率の低下が問題です。継続率を高めるためにレミケードではイムランを併用しますが感染症のリスクが上昇します。
エンタイビオは日本人においては短期10週ではプラセボと寛解導入率に有意差がつきませんでした。52週では寛解維持率がプラセボを上回りました。日和見感染が少ない事が良い点です。腸管感染症(C.Difficile)が増加しますが重篤ではありません。潰瘍性大腸炎では抗TNFα抗体と比較すると30%重症感染症が低下します。クローン病では差がありません。また併存疾患を2個以上持っている60歳以上の患者さんではエンタイビオとステラーラは抗TNFα抗体より感染症による入院が低率です。
ゼルヤンツは経口剤ですが有効な患者さんは3日ぐらいで効果を実感できます。帯状疱疹の発症が多いのが欠点です。5mgより10mg 高齢 低体重 抗TNFα抗体使用歴が発症のリスクです。投与期間は関係ありません。バイオ治療歴のある入院重症例には10mg x 3回/日の投与が20mg/日より有効です(日本では保険適応外)。
リンヴォックは大規模治験の成績では寛解率 有効率ともに高く 便回数 出血は1日目より改善し 腹痛 便意切迫感も3日目より改善します。症状がすぐによくなった患者さんは8週の寛解導入が高率です。副作用は帯状疱疹とCPK上昇です。ネットワークメタアナリシスではこれまで分子標的薬の中で寛解導入に最も優秀なのはレミケードでしたがリンヴォックはレミケードより優秀な成績になっています。リンヴォックの最適患者さんは 入院重症例、入院を視野に入れた外来中等症、慢性持続しているバイオ不応例からの変更、ゼルヤンツ ジセレカの効果不十分です。但しゼルヤンツ ジセレカで副作用が出た患者さんはリンヴォックに変更しない方がよいでしょう。リンヴォックで寛解導入がすぐにできた患者さんの維持では15mg/日が適当です。バイオ不応例では30mg/日で維持するのがよいでしょう。JAK阻害剤の使い分けですが活動性が高度の患者さんはリンヴォック、中等度はゼルヤンツ、高齢者 帯状疱疹などの副作用が心配な患者さんにはジセレカがよいと思われます。