2023/3/10 Ulcerative Colitis Web Seminar

潰瘍性大腸炎治療戦略

-外来での治療最適化を目指して-

銀座セントラルクリニック院長 鈴木 康夫 先生が上記の演題でシンポニーを中心にした講演をしてくださいました。

 

潰瘍性大腸炎治療の最も重要なお薬はステロイドです。潰瘍性大腸炎患者さんに初めてステロイドを投与すると短期では約90%の改善率で素晴らしい成績ですが2年後には約50%の患者さんがステロイド難治例に陥ります。ステロイドを投与するさいには次の手まで考えておきながら加療することが重要です。ステロイド投与の上限は80mg/日です。重症例の治療の時は外科のある施設で行わなければなりません。潰瘍性大腸炎は病態に関わる要因が多く、同じ患者でも時期によって病態、関わるサイトカインが異なってきます。治療方針は病型 重症度 病勢の推移などによって決定されますが 効果にevidenceで差がない場合は患者さんの意思(Shared Decision Making)が尊重されます。これまでは寛解導入と寛解維持が一続きであることが原則でしたが最近は導入と維持を別の治療で行う考え方も認められるようになってきました。

シンポニーは他の抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)に比較して抗薬物抗体の産生が少ないのが特徴です。日本におけるシンポニーの市販後調査(約400例)において 患者背景ではアザチオプリンの併用率が約60%で難治症例が多く対象になっています。6週後の寛解率は約50%、1年後の寛解維持率は約40%でした。最初のバイオ製剤として使用したほうが2番目以降に使用したときより成績が良く(短期 寛解率;60% vs 40%)6週で寛解になれば1年後も高い割合で寛解維持されます。実臨床のデータにおいて シンポニーの対象は 中等症 ステロイド依存例 全大腸型の患者さんが多く ステロイドの副作用でステロイドが投与できない患者さんにも投与されています。1年後に寛解維持できていた患者さんは4年後になってもそのうちの70%が寛解維持されていました。外来中等症の患者さんには多くの治療の選択肢があります。患者さんの生活のスタイルとニーズに寄り添った形での治療選択が大切です。