2023/3/13 Ulcerative Colitis Practice Seminar
実臨床におけるべトリズマブの使用方法 ~寛解導入を中心に
酒見内科胃腸科 副院長 酒見 亮介 先生
実臨床におけるべトリズマブの好適症例を再考する
大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授 中村 志郎 先生
エンタイビオの作用機序は T細胞の浸潤抑制、M1マクロファージ:(TNF, IL-6, IL-12 を産生する炎症型マクロファージ)からM2マクロファージ:(IL-10を産生する組織修復型マクロファージ)への遺伝発現変化、血中単球の侵入抑制、樹状細胞の浸潤抑制などです。
実臨床における短期間の寛解率:30%、有効率:50% ステロイドフリー寛解率:25%です。メタ解析においてはバイオ製剤未投与例の方がバイオ製剤既投与例より成績が良く 継続投与により寛解率が向上することが確認されています。また治療開始時に便中カルプロテクチン>400(内視鏡検査で≧MES2に相当する)でエンタイビオの寛解導入率が低下します。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)において白血球側のインテグリン:β7、β1、内皮細胞側の接着因子:ICAM-1、MAdCAM-1の発現亢進が知られています。エンタイビオは末梢血においても獲得免疫反応が亢進している患者さんにより有効であると報告されています。エンタイビオは投与の結果Th1, Th2, Th17を介する免疫反応を抑制しますがTh9には影響しません。Th9細胞はIL-9を産生することにより好中球を活性化し粘膜障害を起こすのでエンタイビオは潰瘍が酷い患者さんには有効ではなさそうです。
抗TNF-α抗体、ステロイドはICAM-1、MAdCAM-1などの接着因子の発現を抑制するので エンタイビオは抗TNF-α抗体、ステロイドの導入前、ステロイドが低用量の時に投与するほうがより効果的です。エンタイビオの好適な症例は ステロイド難治例ではステロイド依存例で プレドニン10㎎以下に減量後の再燃 ステロイド離脱後の短期再燃、チオプリン不応、非難治例では5-ASA不耐、チオプリン不耐 カログラ離脱後2か月以内の再燃 です。内視鏡所見はびらん程度で潰瘍は非高度、疾患活動性が高すぎない事がポイントです
海外の大規模治験の成績と異なり、日本人を対象とした治験においてはヒュミラとエンタイビオは共に寛解導入においてバイオ製剤未投与例においては有効性が示されましたが バイオ製剤投与例では有効性は示されませんでした。海外の実臨床のデータではヒュミラとエンタイビオの治療成績は同等です。ヒュミラは病態が合えば寛解導入でき ステロイドも減量できますが減量効果は症例によりバラツキがあります。エンタイビオは病態によらず満遍なくステロイドを減量できます。どちらの製剤も活動性の高くないステロイド依存症例の最初のバイオ製剤として使用するのがよいでしょう。