2023/3/23 クローン病診療のT2T実践にLRGを活かす

兵庫医科大学の新崎 信一郎先生が総合座長をされ

 

「機序から考えるLRGの使用法」岩手医科大学膠原病アレルギー内科教授 仲 哲治先生

「各種バイオマーカーのクローン病小腸病変検出力の比較:LRG vs 便中カルプロテクチン」四日市羽津医療センター 外科・IBDセンター 下山 貴寛先生

「クローン病診療におけるLRGの有用性」市立砺波総合病院 消化器内科主任部長 北村 和哉 先生

講演の後にディスカッションがありました。

 

病気によって中心となるサイトカインは異なります。例えば関節リウマチはTNFα、IL-6, 潰瘍性大腸炎 クローン病はTNFα、IL-23、脊椎炎はTNFα、IL-17A、乾癬はTNFα、IL-23, IL-17A  このようにTNFαは炎症の要です。臨床でこれまで使用されてきた炎症のマーカー CRP, SAA(上昇)、アルブミン(低下)はIL-6の変動と共に動いて行きます。CRPは肝臓で産生されますがLRGは炎症の部位で産生されます。LRGはそのプロモーター領域にSTAT3, NFκβが存在し それぞれの部位でサイトカインのコンビネーションにより産生されます。

LRGは潰瘍性大腸炎 クローン病の臨床的活動性 内視鏡的活動性に相関します。潰瘍性大腸炎ではLRG≦13.5がMES≦1にあたります。LRG≦11がMES:0にあたります。

クローン病では小腸の粘膜治癒:LRG≦13.4、SES-CD≦2  またはLRGのみで評価した場合は LRG<9,または<13(研究によって異なる)となります。

潰瘍性大腸炎の治療でJAK阻害薬を使用すると JAK1はSTAT3を抑えるのでIL-6が抑制され CRPが低下し、CRPはマーカーとして利用できなくなります。LRGはJAK阻害薬の影響を受けません。エンタイビオはCD4+メモリーリンパ球 好酸球の腸管内への浸潤をおさえますが 好中球 マクロファージは抑えません

エンタイビオを投与した場合もCRPが上昇しにくくなり LRGの方がマーカーとしてより有用です。臨床症状がないのにLRGが上昇した場合は画像検査をすすめたほうがよいでしょう。LRGの数値により 臨床寛解  粘膜治癒 病理寛解 分子レベルの寛解を区別できるかもしれません。

クローン病小腸病変を評価する画像診断としてCTEnterograpy(CTE) があります。CTEの活動性スコアはLRG 便中カルプロテクチンに(FCP)相関します。CTEスコア:0(炎症がまったくない)になるにはFCP<150, LRG≦13.3 四日市羽津医療センターの研究ではクローン病小腸病変の検出力の比較ではFCP≧LRGでした。