2023/4/18 オンボー ネットフォーラム

潰瘍性大腸炎治療における抗IL-23p19抗体ミリキズマブへの期待

 

北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 特別顧問 日比 紀文 先生が司会をされ 北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター  センター長小林 拓 先生がミリキズマブ(オンボ-)の講演をされました。

 

IL12/23は自然免疫から獲得免疫への橋渡しの中心です。IL12はp35とp40からなる二量体で IL23はp19とp40からなる二量体です。IL12はnaïve T細胞からTh1細胞への分化に IL23はTh17細胞への分化に役立っています。

マウスの実験モデルではIL12p40を制御することにより実験腸炎を抑制できます。このことを応用して現在 潰瘍性大腸炎 クローン病で用いられているお薬が抗12/23抗体:ステラーラです。IL12は潰瘍性大腸炎ならTh17系 クローン病ならTh1系の特徴を際立たせます。IL12とIL23の両方を制御するのとIL23のみを制御するのと どちらがより有効なのかまだ結論はでていません。人のリンパ球を使用した実験ではIL12で刺激するとIL17が低下します。IL12を抑制しない方がTh17応答を抑制するには都合がよいのかもしれません。乾癬では抗IL12/23抗体より抗IL-23抗体の方がより有効との成績がでています。

ミリキズマブ(オンボ-)はIL23を特異的にブロックするバイオ製剤です。最近 日本人のアンケート調査では 潰瘍性大腸炎で患者さんが最も改善を願う症状として便意切迫:急に便意を催すことが挙げられています。便意切迫は潰瘍性大腸炎の基本的症状、診断 治療の双方において第一に考慮すべき症状 その改善が治療のゴールとされています。

オンボ-の潰瘍性大腸炎に対する治験では便意切迫が大規模治験としては初めて評価項目に含まれました。欠点は便回数や出血程度などの客観的評価ではなく患者さんの主観的な評価であることです。またこの治験では難治例の中にJAK阻害薬抵抗例も含まれました。対象患者のうち40%がBio-JAK1剤以上の治療抵抗症例で、20%が2剤以上でした。短期(12週)の寛解率24%、有効率64%です。Bio-JAK未使用例の方が使用例よりより良い成績でした。2週ぐらいで効果がはっきりとしてきます。

維持試験では1年後の寛解率50%でBio-JAK未使用例52%と使用例46%で成績にあまり差はありませんでした。12週で寛解に達した患者さんは1年後もそのうちの60%が寛解を維持していました。便意切迫は65%の患者さんでほぼ消失していました。内視鏡的改善は60%で、組織的改善を加えると40%の患者さんが達成していました。導入時の3回投与で寛解になった患者さんは以後プラセボの投与でもそのうちの47%の方が1年後にも寛解を維持されていました。

オンボ-は炎症の上流を制御するのでよく効いた患者さんは効果が長続きするのかもしれません。1年間における副作用は咽頭炎 関節痛 発疹 頭痛などでプラセボと発症率に差はありません。注射部位反応、末梢性浮腫で治験が中止になった方が極少数(それぞれ0.3%)認めました。