2023/4/26 スキリージインターネットライブセミナー
名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部 准教授 中村 正直 先生
これからのクローン病治療における小腸病変に対する期待
~IL-23/Th-17経路と実臨床での経験を踏まえて~
クローン病治療おいてこれまで抗TNF-α抗体(レミケード ヒュミラ)が治療の中心です。その結果わかってきたことは抗TNF-α抗体は大腸の潰瘍をよくすることができるが、小腸の潰瘍はなおりにくいため、抗TNF-α抗体を投与したクローン病患者さんの2/3は粘膜治癒を得る事ができていません。小腸 大腸の両方に効果のあるお薬の臨床への登場が期待されています。小腸に病変がある場合 年に1回 バルーン内視鏡 CTE MRE カプセル内視鏡 小腸造影などその患者さんに施行可能な検査で経過観察することが大切です
マウスでの研究ではマクロファージは大腸、Th17細胞は空腸に多く分布しています。
クローン病患者さんの腸管周囲の脂肪織にはTh1細胞が回腸 大腸に多く Th17細胞は回腸に多く分布しています。潰瘍性大腸炎患者さんの腸管周囲の脂肪織にはTh1細胞が多く分布しています。クローン病患者さんの小腸病変には主としてIL23とTh17細胞が関わっています。Th17細胞はIL23 の刺激が継続するとTh1細胞のような働きを始め炎症のさらなる増幅が起こってきます。しっかりTh17 の経路を抑えればTh1、Th17の働きによる炎症を抑制することができます。スキリージ(リサンキズマブ)はp19に対する抗体で、IL23をブロックしTh17細胞の経路を抑制します。
治験の成績ではスキリージはCDAI>300を超える比較的症状の強いクローン病患者さんに対し CDAI≦300のクローン病患者さんと同じ程度に有効で 投与3回目の12週で粘膜治癒すると1年後の入院 手術が減ります。投与後1年時の副作用ではプラセボと発症率は同等で重篤なものはありません。クローン病治療において抗TNF-α抗体は導入時にはよく効きますが2次無効の発生のため長期の維持率が低下します。スキリージは導入がうまく行けば維持効果が高いのが利点です。