2023/5/12 UC Web Seminar
潰瘍性大腸炎治療戦略 抗IL-23p19抗体ミリキズマブの有用性の検討
関西医科大学 内科学第三講座 教授 長沼 誠 先生が司会をされ 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 教授 松岡 克善 先生が潰瘍性大腸炎におけるミリキズマブ（オンボ－）の有用性について講演されました。
腸管リンパ節の中で未分化T細胞はIL23の助けを借りてTh1細胞に分化します。ここがその後の免疫反応の最上流点に位置します。IL23受容体は炎症性腸疾患の感受性遺伝子にもあたり ここに変異がありIL23のシグナル伝達を中断すると炎症性腸疾患になりにくくなります。
ミリキズマブ（オンボ－）はIL23を特異的にブロックするバイオ製剤です。オンボーの潰瘍性大腸炎に対する大規模治験の成績は他のバイオ製剤、JAK阻害薬と遜色ない成績で 副作用では感染症は増加せず過敏症がプラセボより多かったです。抗IL17抗体 抗IFN-γ抗体は潰瘍性大腸炎における治験では有用性は示せませんでした。
最近 便意切迫感の改善が潰瘍性大腸炎において重要であることが認識されてきています。便意切迫感の定義：突然かつ緊急に感じる排便の必要性 とされています、実際にはトイレに行くまで5分程度我慢できるかどうかです。潰瘍性大腸炎が重症になると30秒も持ちません。潰瘍性大腸炎の患者さんは腹痛 下痢 血便と同様に便意切迫感に悩まされています。オンボーの治験は初めて便意切迫感の改善を数字として示しました。
オンボーの特徴は便意切迫感の改善を中心としたQOLの向上を期待できる点です。潰瘍性大腸炎ステロイド難治例に対する治療薬は現在非常に多くなりどれを選ぶかより難しくなってきています。
入院を要する重症例：プログラフ シクロスポリン レミケード （ゼルヤンツ、リンヴォック）
抗TNFα抗体不応：ステラーラ ゼルヤンツ リンヴォック
高齢者：ステラーラ エンタイビオ
合併症を持った患者さん：ステラーラ、エンタイビオ
ざっとこのように使い分けしますが 若くて中等症の患者さんはどれを選択しても有効です。そのような時には主治医と患者さんでお互いによく話し合って 患者さんによく納得してもらった上でお薬を決定します。このようなプロセスをShared Decision Making(SDM)と呼びます。主治医にとっては治療に患者さんが参加することによる治療効果の上昇 患者さんには満足度の向上が期待されます。