2023/5/27 リンヴォック インターネットライブ セミナー

潰瘍性大腸炎治療最前線

-使用経験からJAK阻害薬の位置づけを考察する-

 

上記の演題で 浜松医科大学 内科学第一講座 教授 杉本 健 先生が講演してくれました。

 

潰瘍性大腸炎の病態はヘルパーT細胞の種類によりいろいろと異なりますが 大きく分けてTh1, Th2, , Th17のそれぞれが主態の病態に分類されます。

Th1細胞が主態:大腸粘膜への好酸球浸潤が少なく リウマチ、関節痛 壊疽性膿皮症などの皮疹を合併しステロイド抵抗性 主になるサイトカイン;TNFα マクロファージにも影響

Th17細胞が主態:腺管への好中球浸潤が目立ち 乾癬を合併しステロイド抵抗性 主になるサイトカイン;IL-23 好中球にも影響

Th2細胞が主態:好酸球浸潤が多く 花粉症 喘息 アトピー皮膚炎などを合併しステロイド依存性 主になるサイトカイン;IL-5、IL-13, GM-CSF 好酸球にも影響

JAK阻害薬は主としてTh1細胞、Th17細胞を抑え、Th2細胞は抑えません。リンヴォックとゼルヤンツ ジセレカの違いは リンヴォックはJAK1を主に抑制しますが JAK2も抑制することによりGM-CSFも抑えてTh2細胞が主態であるアトピー性皮膚炎にも効果を発揮できます。

抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)はTh1細胞を抑制します。ステロイドはTh2細胞を抑制します。抗12/23抗体(ステラーラ)は まずIL-12を抑制することにより炎症初期の増悪を抑え、さらにIL-23を抑制することによりTh17細胞への分化を抑え慢性炎症の持続をブロックします。白血球除去療法、プログラフはTh1細胞を抑えます。

ステロイド抵抗性の重症例はTh1細胞、Th17細胞が主態であるのでレミケードやプログラフで治療し白血球除去療法を併用します。ステロイド依存性の患者さんにはステロイド+エンタイビオで治療します。維持治療においてエンタイビオの方がリンヴォックより安全であるからです。アトピー性皮膚等の合併症がある患者さんにはリンヴォックを投与します。リンヴォックの副作用で約6年間観察した結果では 帯状疱疹の発症率は5%です。血栓症は増加しないようです。