2023/6/14 Ulcerative Colitis 全国Web Seminar

長期寛解維持を目指した潰瘍性大腸炎治療

潰瘍性大腸炎への治療戦略

~ステロイド依存症例への対応を中心に~

福澤 誠克 先生 東京医科歯科大学病院 消化器内科 准教授

 

~新規治療法における便中カルプロテクチンの使い方~

竹内 健 先生 辻仲病院 柏の葉 消化器内科部長/IBDセンター長

 

旭川医科大学 消化器・血液内科教授 藤谷 幹浩 先生がご司会され お二人の先生が上記内容でご講演されました。

 

潰瘍性大腸炎治療において実臨床では全体の35%の患者さんにステロイドの全身投与が行われています。30日後の臨床寛解率は60%ですが2年後にはそのうちの75%がステロイド依存 ステロイド抵抗の難治例になってしまいます。また高齢者には若年者より効果が低下します。症状の小さな再燃増悪に対してすぐにステロイドを少量で使用し 有効でないとステロイドを段階的に増量するとステロイド依存例を作ってしまいます。このようにステロイド依存症は医者・患者が作ってしまうことがあります。

潰瘍性大腸炎治療の目標は粘膜治癒:MES0です。MES1で1年後の再燃率が高く 24週後のステロイド バイオ製剤の使用率が高いとのデータがあります。エンタイビオの副作用は上気道炎 関節痛 クロストリジウム ディフィシル腸炎などです

潰瘍性大腸炎患者さんの管理において現在使用している薬剤が本当に効いているかを長期に定期的にチェックすることが大切です。

CRPはIL-6を介して肝細胞より放出されます。LRGは炎症局所より放出されます。CRP LRGは炎症全体をひろってしまうことが欠点です。

カルプロテクチンは好中球に存在しリンパ球には存在しません。常温で7日間安定です。便中カルプロテクチンは腸管特異的ですが腸管の炎症は何でもひろってしまいます。大腸癌でも上昇します。直腸炎では上昇しにくいです。組織学的寛解を予測でき 無症状なのに便中カルプロテクチンが上昇するとその3ヶ月後に臨床的に再燃することが多いです。

ですので便中カルプロテクチン>200になったら無症状でも白血球除去療法や5-ASA 製剤で加療するとその後の再燃を防ぐことができます。便中カルプロテクチンの欠点は検査値がばらつくことですが粘膜治癒が近づくと安定してきます。CRP, LRGは全体の炎症を反映し便中カルプロテクチンは粘膜の状態を反映するので粘膜治癒の判定に適しています。この値をみて薬剤の減量 投与間隔の調整を行うことができます。

エンタイビオは疾患活動性が中等症、高齢者、併存疾患の多い患者さんに適しており 有効でなかったとしても次の薬剤への影響が少ないのが良い点です。 初期治療でFCP<300になるとエンタイビオの長期投与は可能です。