20230718 UC Web Forum
潰瘍性大腸炎基本治療のアンメットニーズと新規治療薬への期待
北里研究所病院の日比 紀文 先生がご司会をされ 大阪医科薬科大学 第2内科 専門教授 中村志郎 先生が上記の演題で講演されました
最近 潰瘍性大腸炎の内科治療は多数の新規薬剤が登場し急速に進化しています。分子標的薬全盛の時代となりましたが 5-ASA製剤とステロイドをはじめとする基本治療薬の最適な使用の重要性にかわりはありません。
コレチメントは、局所作用型のステロイドであるブデソニドを成分とし、Multi Matrix System(MMX)を応用したドラックデリバリーシステムを持った経口薬です プレドニゾロンなどの従来のステロイドは、体に吸収され全身に作用しますが、ブデソニドは炎症部位で強力な抗炎症作用を発揮し、体に吸収されると速やかに肝臓で90%が代謝され 潰瘍性大腸炎におけるバイオアベイラビリティーは10%程度です。 このため、従来のステロイド剤の一番の問題であった、全身性の副作用(感染症、骨 粗鬆症、副腎機能低下など)が少ないという特徴があります。CYP3A4で代謝されるので肝不全の患者さんやグレープフルーツを食べると血中濃度が上昇することがあります。
コレチメントの外側はオイドラキッドで包まれておりPH>7で崩壊するので大腸に特異的に放出されます。またMMXによりゆっくりと直腸までまんべんなく大腸粘膜にとどきます。ただし人間の腸のPHは個人差があり20%の方はPH:7を超えません。リアルダやアサコールと同様ゴーストピルの懸念があります。また、空腸でPH>7になる方が10~20%いらっしゃいます。
コレチメントの潰瘍性大腸炎のおける国内治験では 直腸炎型の患者さんしかアサコール3600mg/日を上回る成績は残せませんでした。海外の実臨床のデータでは5-ASA製剤不応の患者さんに追加して治療を行うと有効性を示すことができました。よく効く患者さんの特徴は 活動性が軽症、CRP低値、左側型 これまでの治療歴が少ないなどです。5-ASA製剤不応 不耐の患者さんが最も良い適応ですが バイオ製剤治療中やアザチオプリンで維持治療中に、基本治療は変えずに行ける程度の軽微な再燃にもよいでしょう。ステロイド経口投与前に使用する薬剤ですのでカログラと位置づけが重なりますが 治療歴が複雑な患者さんはカログラのほうがよいと思われます。左側の炎症が強ければレクタブルの併用も可能です。