2023/8/17 UC Web Seminar
潰瘍性大腸炎治療における分子標的薬治療の現状と課題
~抗IL-23p19抗体ミリキズマブへの期待~
東京医科歯科大学 消化器連携医療学 准教授 藤井 俊光 先生が潰瘍性大腸炎におけるオンボ-(ミリキズマブ)の有用性について講演されました。
現在 炎症性腸疾患の患者さんは世界で700万人 アメリカ合衆国で300万人 日本で40万人と報告されています。患者さん一人一人に最適の個別化医療:precision medicineを実践するには薬剤の効果予測ができるバイオマーカーが必要です。現状では効果予測としては、投与後 超早期から早期の血中薬物濃度の高値が役立ちます。
エンタイビオ:バイオ未投与の患者さんにはよく効きますがバイオ使用後の患者さんでは効果発現がゆっくりです。安全性は高いです
カログラ:ステロイドより副作用は少ないですが効果は緩徐です。
JAK阻害剤:経口薬剤なので免疫原性がないので中止後再導入がしやすい
ゼルヤンツ:効果発現は早く投与後3日ぐらいで効いてきます。重症例にはゼルヤンツ30mg/日 が有効です。
ジセレカ:JAK阻害薬の中で最も安全性が高いです
リンヴォック:効果発現が早く治験では投与後1日目から有効性でプラセボと有意差がついてい る。有効性は高いが副作用も多い
ステラーラ:初回静注後ぜんぜん効果がない患者さんには次の投与の8週まで引っ張らず次の治療に変更する。一度効果がでると長期に安定してくる。乾癬に対する効果ではステラーラよりオンボーが上回っています
オンボー:オンボ-(ミリキズマブ)はIL23を特異的にブロックするバイオ製剤です日本人の患者さんに対するアンケートでは最も改善してほしい症状は便意切迫感です。治療により他の症状がなくなっても便意切迫感のみ残る場合があります。オンボーの治験は初めて便意切迫感を評価し、その点でも有効性を示しています。短期の寛解率:20% 有効率:60%で抗TNFα抗体(シンポニー)と同等の治療成績です。
実際の診療において 重症例には静注のシクロスポリン、プログラフ+ステラーラ、プログラフ+エンタイビオ、ゼルヤンツ30mg/日が有用です。抗TNFα抗体(レミケード)の2次無効だけれども反応がある場合には作用機序をかえずにシンポニー ヒュミラ倍量への変更も有効です。