2023/8/2 Experience Web Seminar

クローン病の複雑痔瘻における問題点

三重大学大学院医学系研究科 消化管・小児外科学 准教授 大北 喜基 先生

 

日本人は白人に比べて肛門病変の有病率が高いです(50% vs  20%~40%) クローン病の肛門病変を合併するとQOLは労働生産性が低下します。

ネットワークメタアナリシスによれは痔瘻治療のエビデンスがあるのはレミケード(インフリキシマブ)です。欧米のガイドラインではレミケードが推奨されヒュミラも使用可能とされています。ステラーラ エンタイビオはまだデータが少なく評価できない状況です。バイオ製剤導入以後(1998年以後)難治の痔瘻による直腸切断率は30%から6%に低下しました。痔瘻治療で最も効果的なのはシートンドレナージ+バイオ製剤投与です。但しシートンドレナージの具体的な方法は専門家の間でも意見が分かれる点があります。

治療目標:完全閉鎖 or 排膿がない状態、素材:ペンローズ or 血管テープor 輪ゴム、方法:原発口に通す or 通さない、抜去のタイミング:抜かない or 寛解導入療法終了直後 or 排膿が完全になくなってから

肛門病変のコントロールがつかないため人工肛門を造設しても 治療により肛門病変をなおすことは難しくて 人工肛門をなくすことは困難です。クローン病関連の直腸癌は散発性直腸癌より予後が悪いのでサーベイランス方法の確立が大切です。