2023/8/7 リンヴォック クローン病適応追加記念 インターネットライブセミナー
クローン病診療における経口JAK阻害薬「リンヴォック」の可能性
岩手医科大学 内科学講座消化器内科分野 教授 松本 主之 先生がご司会され 大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授 中村 志郎 先生が上記の演題でご講演されました。
クローン病の病態は全層性のマクロファージの著増を背景とするTNF産生過剰状態です。粘膜下層ではTNFαを産生するマクロファージが認められます。その割合は潰瘍性大腸炎よりクローン病の方が多いです。
クローン病はTh1/Th17が優勢な病態ですが 潰瘍性大腸炎はTh2細胞が優勢で NK細胞からのIL13による上皮バリアの障害がその病態と考えられています。
クローン病発症時、炎症型は75%ですが抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)発売前は病気の進行により5年でその割合が50%まで減っていました。 クローン病に対し抗TNFα抗体が発売され その使用後は病状悪化することなく 5年で80%となり 維持できるようになりました。しかし抗TNFα抗体の臨床上の問題点は 2次無効で レミケード:年率13% ヒュミラ:年率20%です。TNFα抗体抵抗性になると結果としてIL17, IL23が亢進した状態になります。また皮膚障害:抗TNFα抗体誘発性皮膚反応(乾癬様皮膚炎 乾癬様湿疹 またはそのオーバーラップ)も切実で 掻痒感や乾燥肌などの症状のみ:13% 皮膚科にて病名(乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹など):4%程度認められます。
JAK1を抑制すると全てのHelper T細胞を効率良く抑えることができます。またマクロファージが活性化するのも抑制します。
ジセレカ ゼルヤンツとリンヴォックの異なる点は リンヴォックはJAK2/Tyk2も抑制する点です。IL6, IL21,TGFを介したTh0からTh17への分化は全てのJAK阻害薬が抑制できますが Th17はJAK2/Tyk2を介してさらに増殖しますがここをリンヴォックは抑えます。
リンヴォックのクローン病に対する治験は 患者さんの背景は バイオナイーブ患者さんの割合が55%で バイオ製剤既往の患者さんのほとんどが抗TNFα抗体を使用されていました。12週の短期のCR-100達成率(有効率)57%で 維持治療として30mg/日 15mg/日を使用すると52週後には 12週で治療反応した患者さんのそれぞれ80%、60%が維持されていました。副作用は短期ではざ瘡などの皮疹 長期では帯状疱疹です。ざ瘡は若い患者さんに多くリンヴォックを減量し外用薬を塗布します。血球減少に対しては30mg/日と15mg/日を交互に休みながら使用するとよいかもしれません。クローン病で経口薬が実臨床で使用できるようになった意義はとても大きいです。リンヴォックのクローン病最適な方は CRP<3, CDAI<250, 肛門病変ない 発熱ない ような患者さんです、早期のクローン病患者さんはスキリージで 病状が進行したクローン病患者さんはリンヴォックがよいかもしれません。