2023/9/5 リンヴォック クローン病適応追加記念講演会

クローン病治療の最前線

~新たな選択肢から考える治療ストラテジー~

大分大学 消化器内科 教授 村上 和成 先生がご司会され 東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 主任教授 猿田 雅之 先生が上記の演題でご講演されました。

 

クローン病の予後不良因子は広範囲の小腸病変(≧1m)ですが診断1年以内に粘膜治癒を達成するとその後の予後が改善します。診断1年以内で炎症型のいわゆるearly Crohnは5-ASA 製剤でも有効です。イムランの使用により40%が長期に寛解維持できます。経過観察には小腸は内視鏡で観察しにくいのでバイオマーカーが有用です。LRG<10なら小腸粘膜治癒達成 LRG<12なら大腸粘膜治癒達成を推察できますので LRG値が達成していれば内視鏡検査を時にはスキップしてもよいでしょう。

抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)はクローン病において特に短期的に有効なお薬ですが2次無効が年率13%~20%発症するので長期の寛解維持率は40%ぐらいです。ステラーラは抗TNFα抗体が有効でなくなった患者さんの30%に効果があります。エンタイビオには即効性はありませんが長期になると段々効いてきます。

JAK阻害剤の違いですが メカニズムにおいてリンヴォックはJAK1選択性が高いですがJAK2,JAK3も少し抑制します。ジセレカはJAK1のみ止めます。ゼルヤンツは全部抑制します。副作用は帯状疱疹 血球減少(特に好中球 リンパ球)です。

経口薬すなわち低分子化合物はoff target効果(本来の目的でない作用や効果)が生じる頻度が比較的高く、予測できない臨床的問題が起こることがあります。バイオ製剤はoff targetの問題が少ないです。リンヴォックは迅速な臨床効果が必要な時には 中等症から重症のクローン病患者さんの第一選択薬になると思われます。スキリージは慢性難治化した中等症のクローン病患者さんに適しています。投与後12週目で改善していなければ他剤に変更も考慮します。