2024/11/15 日本炎症性腸疾患学会学術集会 ランチョンセミナー1

軽症~中等症・重症潰瘍性大腸炎治療戦略 Up to Date

 

名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部 准教授 中村 正直 先生が上記の演題で講演されました。

 

腸粘膜は外界の抗原や細菌などを体内に侵入させないバリアとしての機能を持っています。バリア機能は 粘液の厚み、タイトジャンクション、抗菌ペプチドから成り立っています。

高脂肪食は腸表面の粘液を減らします。精神的なストレスは腸管運動低下 腸粘膜のバリア機能低下をもたらし腸管炎症を惹起します。逆にディスバイオシス(腸内細菌叢の乱れ)もメンタルヘルスの悪化をもたらします。不溶性食物繊維の取り過ぎも短鎖脂肪酸不足をひきおこし自律神経異常をおこします。

血液脳関門と腸粘膜バリアは似ています。腸のバリア機能低下は自律神経異常 腸内環境の悪化 高脂肪食 食事パターンの変化などで起こってきます。

ケストースはオリゴ糖の中の1種類で 腸内細菌コントロールに役立つ「高機能プレバイオティクス」のひとつです。ケストースは酪酸を増加させる作用がとっても優れていて腸内細菌叢の乱れを改善します。

5-ASA 製剤は動物実験ですがIL10,IL22を増加させて腸内細菌叢を良くします。

コレチメントは空腹時の方が血中濃度は上昇するので食事前に服用させたほうがよいかもしれません。

お薬開始時に寛解導入できた後の維持療法で維持が高いのはJAK阻害薬でその次がステラーラです。難治性潰瘍性大腸炎患者さんの治療においては ときどき どのお薬を使用してもうまくいかない時があります。ジセレカ、シンポニーは3剤目になると治療効果が低下するというデータがあり、なんとか2剤目までに寛解にもちこむことが理想です。抗p19抗体のオンボ-は3剤目でも治療効果は低下しません。日本人の維持治療においてもバイオ製剤未使用例と使用例で治療効果は同じでした。オンボ-は日本人において抗薬物抗体が高率に出現しましが長期間の維持効果の低下などはおこしていません。一度寛解になると約3年程度はその効果継続します。臨床で使用できるもう一つの抗p19抗体はスキリージです、オンボ-はIgG4 スキリージはIgG1ですが臨床の有効性に差があるのかはまだよくわかりません。