2024/2/5 Ulcerative Colitis 全国Web Seminar

臨床と病理のトランスレーション

IBDと炎症細胞  ~組織学的評価基準~

上記の演題で弘前大学医学部付属病院 病理学 助教 明本 由衣 先生が講演してくれました

 

炎症性腸疾患の診断に最も有用な所見はbasal plasmacytosisです。basal plasmacytosisの定義は陰窩底部と粘膜筋板の間に形質細胞が3個以上存在することです。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)では90%以上に認めます。

下行結腸 S状結腸 直腸にbasal plasmacytosisを認めた場合はクローン病より潰瘍性大腸炎を考えます。

basal plasmacytosisには常に1~3個以上の好酸球を伴っています。

潰瘍性大腸炎の病理評価にGeboesスコアとNancy Indexがあります。Geboesスコアで組織学的寛解はGrade 2A以下 またはGrade 3以下です、Nancy Indexで組織学的寛解はGrade2未満です。

炎症性腸疾患の病理評価で好酸球浸潤を含んでいるのはGeboesスコアのみですがbasal plasmacytosis が評価に入っていないのが欠点です。

Geboesスコア≧3.1 plasmacytosisありは再燃の兆候です。内視鏡評価:MES; 0または1でも病理評価でplasmacytosisがあると再燃までの期間が短縮するというデータがあります。また左側大腸で好酸球を多く認める場合も再燃の兆候です。

Geboesスコア:0を達成すると再燃リスクが低くなります。

臨床的には潰瘍性大腸炎なのに病理でbasal plasmacytosis を認めないことがあります。この時は生検時期に留意しておく必要があります。basal plasmacytosisを病理で認めるのは発病後2週で40% 4週で60%だからです。またbasal plasmacytosisは病理標本に粘膜筋板が入らないと評価できないので小さい標本では評価できないことがあります。