2024/2/7 UC Web Seminar

潰瘍性大腸炎患者が求める最適解を考える

~臨床試験から見るオンボー期待~

東北大学病院 消化器内科 病院講師 志賀 永嗣 先生が潰瘍性大腸炎におけるオンボ-(ミリキズマブ)の有用性について講演されました。

 

5-ASA不耐は現在増加してきており10%を超えるといわれています クローン病より潰瘍性大腸炎の患者さんでその割合は高く 将来手術になるリスクが高く予後不良の可能性があります。抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ シンポニー)で寛解導入 維持できている患者さんは5-ASA 製剤を休薬しても入院や手術が増加することはないようです。

ステロイドは高齢者に投与すると若年者と比較して 寛解率は低く 手術率は高く 血栓症や感染症が増加します。TNFαは炎症の末端で共通して増加しているサイトカインです。潰瘍性大腸炎、クローン病ではTNFαに次ぐサイトカインハブがIL-23です。炎症性サイトカインの多くはJAKを介してシグナル伝達をしています。免疫細胞が腸管に移動するのに接着因子が関与しています。

レミケードは潰瘍性大腸炎ではイムランと併用したほうが有効性を上昇させ2次無効を低下させます。

エンタイビオ ステラーラはいずれも安全性が高く長期の維持が可能なお薬です。エンタイビオはC.difficle感染が増加しますが多くは非重篤です。

大規模治験において安全性が最も優れていたのは潰瘍性大腸炎ではエンタイビオで、クローン病ではステラーラです。

リンヴォックは出血は服用1日目から 腹痛や便意切迫感は3日目から改善し効果発現が迅速です。しかし副作用が多く 特に帯状疱疹はJAK阻害薬(リンヴォック ゼルヤンツ)のみが統計学的有意差を持って増加します。高用量では発症リスクがさらに増します。

ネットワークメタアナリシスによる解析では有効性の面では潰瘍性大腸炎に最初に投与するお薬はエンタイビオかレミケードです。治療の受け入れやすさでは1日1回の経口薬(JAK阻害剤)か 投与期間が長く治療時間の短い皮下注製剤:ステラーラがよいです。

便意切迫感は潰瘍性大腸炎の活動期の90%に認める症状で患者さんのQOLと強く相関します。治験において早期に便意切迫感が改善するとその後の臨床寛解率や内視鏡寛解率が上昇することが報告されています。

IL12はIFNγを誘導し IL23はIL17, IL22を誘導します。IL12は病気の初期に IL23は慢性期に病態を促進させるといわれています クローン病ではIL12とIL23同時にブロックするよりIL23のみブロックしたほうが治験における治療成績は良好でした。オンボ-(ミリキズマブ)はIL23を特異的に抑制するバイオ製剤です。月1回静注の導入治療が12週まで可能なのと、皮下注射で維持療法中に再燃した時に 静注により再寛解導入ができます。導入12週で改善を認めない患者さんに対しあと12週静注を月1回継続すると そのうちの50%の患者さんで治療効果がでてきます。結果として導入から計24週まで月1回静注を継続すると全体の80%の患者さんに症状の改善が期待できます。