2024/3/21 ジセレカ錠 UC Internet Live Seminar

潰瘍性大腸炎に対する治療課題から考えるFilgotinibへの期待

 

札幌厚生病院 副院長・IBDセンター長 本谷 聡 先生がご司会をされ 東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 主任教授 猿田 雅之 先生が上記の演題で講演してくれました。

 

令和5年度の潰瘍性大腸炎治療指針の主な変更点は 経口ステロイドは中等症以上の潰瘍性大腸炎に投与することとカログラ錠はステロイド投与の前に使用することが明記されました。

レセプトデータによる日本における潰瘍性大腸炎に対するステロイドの投与方法の解析では 潰瘍性大腸炎患者さんの20%が全身性のステロイド投与が行われ そのうちの44%がステロイド依存症に陥っています。ステロイド依存症に対する治療として アザチオプリンが30% advanced therapyが17%用いられていますが残りの約50%の患者さんにステロイドが漫然と投与されていました。

潰瘍性大腸炎患者さんの病態把握に用いられるバイオマーカーとしてLRG 便中カルプロテクチンがこれまで使用されてきました。LRGはMES 0と1の区別は困難ですが2,3の区別は可能です。便中カルプロテクチンは内視鏡所見と連動して段階的に上昇します。

2024年1月に新しいバイオマーカーとしてPEG-MUMが保険収載されました。尿で測定できるので簡便で、病理 内視鏡 臨床スコアに相関した階段状に上昇するので潰瘍性大腸炎の病態把握に有用です。

潰瘍性大腸炎ステロイド難治例に対する抗TNFα抗体の治療効果は充分ではなく長期維持は40%ぐらいです。

JAK阻害薬は現在 ジセレカ、ゼルヤンツ、リンヴォックの3種類がありますが作用メカニズムの違いは ジセレカがJAK1を優先的に阻害するのに対し ゼルヤンツ リンヴォックは他のJAKも阻害するところです。ジセレカはアザチオプリンと併用できますが 併用しても治療効果は上昇しません。ですのでジセレカ投与で効果がでたらアザチオプリン併用している患者さんはアザチオプリンを中止しても良いと思われます。アザチオプリン併用を継続しても副作用は増加しません。

日本における実臨床のデータをみると バイオ製剤を投与しても寛解導入できず くすぶっているような軽症寄りの中等症に投与され 臨床効果は経時的に上昇します。継続率は1年半で50%程度で バイオ未使用例の方がバイオ既使用例より成績がよかったです(60%vs 40%)副作用は少ない結果でした。大規模治験の副作用のデータではゼルヤンツとリンヴォックは帯状疱疹発症のリスクが上昇します。ジセレカは炎症が燃えさかる前の軽症よりの患者さんに投与するのがよいでしょう。