2024/3/8 リンヴォック インターネットライブセミナー
IBD診療とリンヴォックがわかってしまう重点Question
岡山大学病院 炎症性腸疾患センター センター長/准教授 平岡 佐規子 先生がご司会をされ、千葉大学医学部附属病院 診療教授・内視鏡センター長 加藤 順 先生が講演されました。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)は臨床的にも 遺伝的にも非常に多様な疾患であり単一疾患というよりも「症候群」と考えた方がよいと思われます。炎症性腸疾患 特に潰瘍性大腸炎はこのように多様性を持った疾患なので一人一人病態も有効な治療法も異なり、お薬の有効性を予測するマーカーがありません。そのため多くの治療薬が現在臨床で使用されています。
潰瘍性大腸炎で入院が必要な重症症例にはシクロスポリン、プログラフが投与されますが血中濃度のモニタリングが必要なので使用できる施設が限定されます。
エンタイビオ、カログラは感染症が起こりにくいのが良い点です。
ステラーラ、オンボーも安全性が高いバイオ製剤です。理論的には潰瘍性大腸炎ではIL12/23を抑制するステラーラのほうがIL23のみを抑制するオンボーより良いかもしれません。
ステロイド抵抗例などの治療にスピードが必要な患者さんにはレミケードやJAK阻害薬が適しています。ステロイド依存例などの慢性持続している患者にはステラーラやエンタイビオが適しています。
JAK阻害薬:ゼルヤンツ、ジセレカ、リンヴォックはサイトカインを広範囲に抑えるので副作用に注意が必要です。リンヴォックの副作用は短期的には血球減少 長期的には帯状疱疹です。また ざ瘡も多いです。関節リウマチの患者さんではカリニ肺炎の発症も認められます。
JAK阻害薬は経口の錠剤なので患者さんの受け入れがよく、医師も処方するだけなので治療のハードルが低いのが良い点です。治験の成績では 血便や腹痛などの腹部症状はジセレカで7日目 ゼルヤンツで3日目 リンヴォックで1日目に有意差を持ってプラセボより改善します。
リンヴォックはジセレカ ゼルヤンツと比較して投与量が多いのが高い有効性の理由と思われます。ですがそのため副作用も多いです。
JAK3 剤の使い分けですが悪化スピードの速い患者さんにはリンヴォックがよいでしょう。安全性を重視した方が良い患者さんはジセレカがよいでしょう。
実際の臨床では投与した患者さんの80%が2週間以内に寛解になりました。ゼルヤンツが効かなくなった患者さんにも有効です。前に使用したJAK阻害薬が有効でない時に別のJAK阻害薬に変更することが可能です。副作用はやはり帯状疱疹、ざ瘡です。
リンヴォックが適した患者さんは 中等症ですが重症に近い患者さん 経口薬を好む方、他のJAK阻害薬で効果不十分な方などです。高齢者に使用する場合は副作用に特に注意することが必要です。JAK阻害薬にも効果減弱する患者さんがいらっしゃいます。