2024/4/17 リンヴォック クローン病 インターネットライブセミナー
クローン病内科治療アップデイト:リンヴォックの位置づけを考える
大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授 中村 志郎 先生が上記の演題でご講演されました。
クローン病の病態は Th1/Th17系細胞優位で、全層性のマクロファージの著増を背景とするTNF産生過剰状態です。粘膜下層では活性化マクロファージの増加が認められます。マクロファージよりのIL-6、IL23がそれぞれT細胞の分化 増殖に役立ちます。
潰瘍性大腸炎はTh2細胞優位で NK細胞からのIL13による上皮バリアの障害がその病態と考えられています。
クローン病対する抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)の有効性はとても高いですが、抗TNFα抗体の臨床上の問題点は 2次無効で 年率10%~20%です。TNFα抗体抵抗性の病態は 病的Th17細胞が活性化し IL23が増加した状態です。その結果STAT3が亢進しアポトーシスが抑制されT細胞が過剰に増殖します。
また抗TNFα抗体を長期に使用した時の副作用として皮膚障害があり20%~30%に合併するとされています。抗TNFα抗体誘発性皮膚反応(乾癬様皮膚炎 慢性湿疹 紅斑など またはそれらのオーバーラップ)は中村先生のご施設での調査では 掻痒感や乾燥肌などの症状のみ:13% 皮膚科にて病名(乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹など):4%程度に認められました。
クローン病の病態を形成するサイトカインはJAK1とJAK2を細胞内伝達の経路に使用するものが多く、リンヴォックはこの2つを効率よく抑制でき炎症を広範に抑えます。ジセレカはJAK1選択性が高いですがJAK2はほとんど抑制しません。ゼルヤンツはJAK2抑制の効率がリンヴォックを下回ります。
リンヴォックのクローン病に対する大規模治験の成績では 投与12週後に4人に1人 潰瘍が消失しました。 維持治療として30mg/日 15mg/日を使用すると52週後には 12週で治療反応した患者さんのそれぞれ80%、60%が寛解維持されていました。潰瘍消失率は向上しません。
バイオ治療経験例では30mg/日投与したほうが15mg/日より良い成績でした。痔瘻の治療では45mg/日投与している12週までは良い成績ですが維持治療になり減量されると再燃傾向がでてきます。直腸や肛門の裂孔であれば30mg/の投与で1年後に裂孔の75%が消失します。副作用は短期ではざ瘡などの皮疹 長期では帯状疱疹です。
統計的にはプラセボとリンヴォックで副作用全体の発症率は同じでした。リンヴォックはクローン病難治例に対して使用できる初めての経口薬です。アトピー性皮膚炎を合併している方や、若くて経口薬を好む男性の患者さんがよい適応と思われます。