2024/6/27 リンヴォック インターネットライブセミナー

潰瘍性大腸炎治療におけるJAK阻害薬の位置づけ

岩手医科大学 消化器内科学 教授 松本 主之 先生が上記の演題で講演されました。

 

炎症性腸疾患の関連遺伝子には獲得免疫系 特にTh17シグナルの関連するものが多く同定されています。

αvβ6は腸管上皮と固有層を接着させる分子ですが 抗αvβ6自己抗体は潰瘍性大腸炎で特異的に上昇しクローン病では上昇しません。診断 経過観察のマーカーになり得ます

潰瘍性大腸炎 クローン病の患者さんは精神的なQOLが低下し クローン病は肉体的なQOLが低下しています。日本人のデータではお薬の治療は飛躍的に改善しましたが潰瘍性大腸炎 クローン病の日常生活のQOLはあまり改善していません。潰瘍性大腸炎の患者さんの日常生活のQOLを改善するには便回数 直腸出血をよくすることが大切ですがそれに加え 便意切迫感:突然かつ緊急に感じる排便の必要性 も改善することが必要です。日本人のアンケート調査では潰瘍性大腸炎の50%、クローン病患者さんの70%が便意切迫感を気にしています。

治療方法で 経口薬 静脈注射 皮下注のうち 最も好まれるのは経口薬です。特に最初に治療する場合は90%以上の患者さんが経口薬を第一に希望されます。検査方法では 血液検査 便検査 内視鏡検査のうちで最も好まれないのは便検査です。

血液検査のLRGは症状 内視鏡所見と相関し、≦13になると組織学的治癒も推定できます。

潰瘍性大腸炎をおこすサイトカインの多くはJAK1をセカンドメッセンジャーとして利用しています。JAK阻害薬:ジセレカ ゼルヤンツ リンヴォックのメカニズムの違いは、ジセレカは主としてJAK1のみ抑制します ゼルヤンツはJAK1,JAK2,JAK3を全般的に抑制します。リンヴォックはJAK全般を抑えるのに加えてJAK2/Tyk2の経路も抑制します。実臨床において、ゼルヤンツは短期(12週)の寛解率:60% 有効率:70%、naïve例とバイオ既使用例で効果にあまり差はありません。ジセレカはゼルヤンツより軽症の患者さんに投与するとゼルヤンツと同程度の効果を示します。ジセレカはnaive例の方が良く効きます。リンヴォックは血便などの臨床症状消失の効果発現が早く、短期の効果は寛解率:65%、有効率:80%です。ネットワークメタアナリシスによる1年までの成績ではリンヴォックは効果が最も高く 副作用は多くありません。(副作用が少ないのはエンタイビオとシンポニーです)

関節リウマチの分野ではJAK阻害薬は高齢者には投与を避けた方がよいとされています。潰瘍性大腸炎ではリンヴォック ゼルヤンツは帯状疱疹のリスクが高く ジセレカのリスクは低いです。経口薬は思わぬ副作用:off targetの副作用が起こりうることに留意することが必要です。JAK阻害薬を投与する場合は基本的にはシングリックスの投与による帯状疱疹発症の予防を推奨します。リンヴォックは投与後2週で効果判定します。リンヴォックが無効ならバイオ製剤に変更します。ジセレカが無効な場合はリンヴォックに変更してもよいでしょう。