2024/6/4 IBD Meet the Expert

~IBD専門クリニックの立場から考える 経口JAK阻害薬:ゼルヤンツの好適症例~

 

上記の演題で 銀座セントラルクリニック 院長 鈴木 康夫 先生がご司会され

河口内科眼科クリニック 院長 河口 貴昭 先生、大堀IBDクリニック 吉村 直樹 先生が講演されました。

 

JAK阻害薬の良い点は治療効果が早くて強く 経口薬なので即日開始でき また半減期が短いので効果がなかったときにすぐに次の治療に切り替えられる点です。しかし副作用はわりと多く帯状疱疹や感染症に注意が必要です。

JAK2を阻害すると血球減少につながるのでJAK阻害薬はJAK2を阻害しないように設計されています。実験レベルのデータですがJAK2を阻害しない順はジセレカ>ゼルヤンツ>リンヴォックです。JAK阻害薬3剤の使い分けですが安全性ならジセレカ、有効性ならリンヴォック バランスをとれているのがゼルヤンツです。

JAK阻害薬の良い適応患者さんは①ステロイド再導入 増量を検討している ②効果なければすぐに次の治療に移行したい ③寛解維持にチオプリンが使用できない ④将来的に分子標的治療が中止できそう

注射薬ではなくて経口薬が適した患者さんは 今すぐ治療したい 注射に抵抗感ある 通院間隔が不定 遅い時間しかこれない 病院に長時間いれない などです。

大規模治験の長期観察試験の結果では 副作用は帯状疱疹 脂質増加 血栓などです。日本人では血栓の発症は少ないです。帯状疱疹は以前に重い感染症に罹患した患者さんのほうが発症しやすく 高用量と低用量で発症率に差はなかったです。血球障害の副作用がありうるのでHb<8の方には投与しないほうがよいです。妊娠中は禁忌です。

実臨床のデータでは維持療法においては20mg/日で維持すると帯状疱疹や感染症が増加します。

初回投与から2週後の症状改善が顕著です。バイオ無効例でも有効ですが無効なバイオ製剤の数が増加するほど有効率は低下します。投与開始後1年での非再燃率:55% 10mg/日で維持すると40%が再燃しますが20㎎に再増量すると70%が有効でした。

JAK3剤の中ではゼルヤンツが最も小さくて服用しやすいのですが錠数が多い:ジセレカやリンヴォックは1錠に対し ゼルヤンツは4錠または2錠 ゼルヤンツを投与開始したら2週後に診察し、寛解に達していなければ もう2週後に再診察します。投与継続するかは8週までに決定します。分子標的治療中に帯状疱疹予防接種できる組み替えワクチン:シングリックスは治療開始前に導入するのが理想ですが 治療のタイミング 自費のため医療費が高額(約4万円程度)などの理由で 予防接種できる患者さんは少数です。帯状疱疹のことを患者さんによく啓蒙しておくことが最も大切です。帯状疱疹を発症したら基本的に薬剤は中止し抗ウィルス薬で加療します。痂皮化するまで消退したら分子標的治療を再開できますが これまでの経過 帯状疱疹の程度により 同じ薬剤を継続するか状況によっては他の薬剤に変更するか考えていきます。