2024/8/22 UC Web Seminar

潰瘍性大腸炎の病態を踏まえたLUCENT試験の解釈と臨床経験に基づくオンボ-の位置づけ

名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部 准教授 中村 正直 先生が上記の演題で講演されました。

 

潰瘍性大腸炎の発症原因ははっきりしませんが高脂肪食、自律神経異常 メンタルヘルスの悪化により腸粘膜の表面粘液が減ることが1つの要因です。粘液が減ることにより陰窩に 本来到達してはいけない細菌 真菌 食事抗原 代謝物が到達することにより免疫異常が引き起こされます。

腸脳相関はメンタルヘルスに影響し心理的ストレスを腸の炎症に伝えています。それらの機序の1つが迷走神経によるアセチルコリンでこの物質はマクロファージのJAK-STAT経路を抑制しています。

IL-23は炎症性サイトカインで潰瘍性大腸炎患者さんの腸の粘膜で炎症を引き起こし Th17細胞の分化 増殖 生存および自然免疫系にも影響をおよぼすことが知れています。 オンボ-はIL-23を治療目標として抗IL-23p19抗体製剤です。大規模治験:LUCENTにおける寛解導入(12週)の成績:寛解24%、改善64%(バイオ製剤未使用:33%、バイオ製剤経験:15%)寛解維持(52週):50%で維持治療ではバイオ製剤未使用患者さんとバイオ製剤経験患者さんとで治療成績に大きな差はありませんでした。副作用は咽頭炎 関節痛 皮下注時の注射部位の痛み 頭痛などです。オンボ-は導入時3回注射後に有効でなくても 患者さんが少しでも効果を感じている 臨床スコアが少しでも改善していれば6回まで継続して静注可能です。そうすると50%の患者さんが症状改善します。日本人にはオンボ-の抗薬物抗体が50%に出現しましたが治療成績には影響ないようです。

現在、潰瘍性大腸炎難治例:ステロイド抵抗例・依存例に対する薬物治療は 抗TNFα抗体(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)抗IL12/23抗体(ステラーラ)抗23抗体(オンボー、スキリージ)JAK阻害薬(リンヴォック、ゼルヤンツ、ジセレカ)、抗インテグリン抗体(エンタイビオ)カルシニューリン阻害薬(プログラフ)と11種類があります。

実臨床のデータでは、潰瘍性大腸炎難治患者さんに対する治療で4剤目 5剤目は維持継続率が低いことが報告されています。つまりだんだんお薬が効きにくくなってくるのです。そのため2剤目までにしっかり寛解に持ち込めるお薬を選択することが必要です。潰瘍性大腸炎の病態はTh1,Th2,Th17系細胞が主体を成すとされています。そのため2剤目までにこれらの系統を全て抑えることが大切かも知れません。抗TNFα抗体はTh1、リンヴォックはTh1、Th2, ゼルヤンツ、ジセレカはTh1,ステラーラ オンボ- スキリージはTh17, ステロイドはTh2を抑制します。例えばコレチメント(ブデソニド:ステロイドのアンテドラッグ)とオンボ-を併用するとTh2とTh17を同時に防ぐことができます。

オンボ-とスキリージの違いは 抗体の種類が オンボ-がIgG4抗体でスキリージがIgG1抗体というところです。臨床、有効性の違いなどはまだはっきりしません。