2025/1/16 ゼポジアWEBセミナー

S1P receptor modulator as a New Game changer in IBD therapy

札幌医科大学 消化器内科 教授 仲瀬 裕志 先生が上記の演題で講演してくれました

 

潰瘍性大腸炎はその発生機序に自然免疫と獲得免疫の両方が関わっている病気です。

チオプリンの寛解維持率は約5年で50%です。チオプリンは活性化したT細胞に取り込まれアポトーシスを引き起こしT細胞が減少します。B細胞にも取り込まれ抗体産生も減少します。

スフィンゴシン-1-リン酸(英:Sphingosine-1-phosphate、S1P)は生体膜を構成するスフィンゴ脂質の代謝産物であり、脂質メディエーターです。S1Pは赤血球や内皮細胞で多く産生されます。血漿中に数百 nM の濃度で存在し 細胞膜上に存在する S1P 受容体のリガンドとして細胞運動制御,アクチン骨格形成,細胞増殖,接着結合形成など様々な細胞応答などを引き起こす生理活性物質でもあります。S1P受容体にはS1P1-S1P5の5種類のサブタイプが存在します。

ゼポジア®は経口のS1P受容体調節剤であり、S1P受容体1および5に高親和性で結合し、リンパ球遊走の上流で作用する潰瘍性大腸炎に対する新規作用機序の治療薬です。リンパ球はS1Pの濃度勾配に従って組織の中から血管内に遊走していきます。ゼポジア®は、リンパ球を末梢リンパ組織内に保持することでリンパ球の体内循環を制御し、病巣へのリンパ球の浸潤を阻害します。また組織内に閉じ込めたリンパ球のアポトーシスを促進します。1日1回の経口での服用が可能であり、利便性の高さも特徴です。NK細胞はS1P5, マクロファージ、B細胞はS1P2を利用しますのでこれらの細胞には影響を及ぼしません。またTreg細胞にも影響はないようです。

日本での治験(J-True North試験)は、日本人の中等症又は重症の潰瘍性大腸炎(UC)患者を対象に行われました。投与12週時に臨床的改善(完全Mayoスコア)が認められた患者の割合は、オザニモド0.92mg群(61.5%)でプラセボ群(32.3%)と比べて統計的に有意に高くなりました。治験の成績を解析すると バイオ製剤未使用とバイオ製剤既使用の患者さんで治療成績にあまり変わりはありませんでした。5-ASA製剤のみ使用の患者さんが他の治療法の併用している患者さんよりゼポジアの治療成績が良好でした。一度寛解になると長期に維持できます。心配な副作用は白血球減少 徐脈 黄斑浮腫などです。白血球は減少しますが感染症は増加しません。服薬量を少しずつ増量すると徐脈は防げます。黄斑浮腫による視力障害はゼポジアを中止すると回復します。