2025/1/22 IBD最新情報報告会

クローン病肛門病変の実臨床におけるアウトカムを考える

 

直腸肛門病変を有するクローン病患者さんは そのうち70%の患者さんは直腸肛門病変 痔瘻の発症が腸管病変の発症より先行しています。Crohn病に合併した直腸肛門病変には 手術で根治が可能な、クローン病とは無関係に発生する病変(incidental lesion)と Crohn病固有のprimary lesion(cavitating ulcer,anal fissureなど)と,これが原因となって感染等の拡大のため生ずるsecondary lesion(痔瘻,直腸,肛門腟瘻など)があります。

incidental lesionは創傷遅延をおこさないように抗生剤の投与が重要です secondary lesionは外科治療に加えて内科治療が必要となります。secondary lesionの中の特に痔瘻はEMTを介して進展してきます。

肛門小窩を結んだ線が歯状線です。歯状線は直腸の粘膜と皮膚の境界になります。ここにできる病変はincidental lesionです。その口側の 肛門柱の上縁を結ぶ線をHerrmann線(ano-rectal junction)といい 肛門の粘膜と直腸の粘膜と境界(外括約筋 境界線)になります。Herrmann線に潰瘍があるとsecondary lesionのため瘻管が肛門挙筋をつらぬいているので治療がやっかいになります。

痔瘻の治療は症状だけでなくMRIで痔瘻の消失が確認できるまで継続することが大切です。バイオ製剤:レミケード ヒュミラなどの抗TNFα抗体を早期に導入したほうが治療成績がよく イムランの併用ができればさらに成績が向上します。抗生剤:フラジールの長期投与も有効な治療法のひとつです。但し神経障害などの副作用に留意が必要です。

若い年齢での痔瘻の発症はクローン病の可能性が高いので便中カルプロテクチンなどを検査して早めに内視鏡診断をすることが重要です。痔瘻の治療では2次孔をシートンドレナージして1次孔はレミケード ヒュミラで加療したほうがよいでしょう。排膿が無くなり直腸肛門病変がバイオ製剤で粘膜治癒になっていればシートン抜去のタイミングです。全世界の大規模治験に痔瘻の成績がレミケード以外にない理由は 重い痔瘻は治験から除外され、適切な評価指標がなく、QOLも評価し難いためと思われます。