2025/11/12 Crohn’s disease Web Seminar
クローン病の内視鏡評価と治療薬の進化
-トレムフィアのDeep Remissionへの期待-
杏林大学 消化器内科 臨床教授 大森 鉄平 先生がご講演されました。
クローン病は腸管ダメージが蓄積する病気です。臨床症状なし かつCRP陰性でも小腸に潰瘍があるとその後の予後が悪くなり再燃 入院 手術が増加します。しかしDeep Remission(臨床寛解+内視鏡的寛解)を達成すると予後は改善します。
クローン病発症早期にバイオ製剤で治療するとDeep Remissionを達成する確率が上昇し 再燃 入院 手術が減少します。これまでのクローン病治療の1st Bioは抗TNFα抗体:特にレミケード(インフリキシマブ)でした。レミケードのTop-down治療でクローン病の半数の患者さんが長期に寛解維持されます。ネットワークメタアナリシスによる解析でも 臨床寛解 内視鏡的寛解においてレミケードが最も優れていると評価されています。
抗TNFα抗体の実地臨床における問題点は2次無効の多さで 長期に観察すると10%~40%の患者さんに認めます。2次無効の原因は従来 抗薬物抗体の出現とされてきましたが それに加え CD14陽性マクロファージから産生されるIL23によってCD4陽性T細胞のアポトーシスが阻害されることもその原因の1つとわかってきました。またTh17細胞は主として真菌 細菌感染から体を守る働きをしていますが IL23によりTh1-like Th17細胞が増加しIL17とIFNγを産生し、潰瘍性大腸炎 クローン病の発症 病状の増悪に寄与します。
トレムフィア(グセルクマブ)はp19に結合しIL23のIL23受容体への結合を抑制することにより効果を発揮する抗体製剤です。トレムフィアの大規模臨床治験:GALAXIは、最近多く行われているレスポンダー再無作為化デザインではなくてTreat-throughデザインで行われました。ステラーラはクローン病患者さんに対する実臨床のデータでは1年後に患者さんの70%が寛解になり 4年後50%の患者さんが継続しています。GALAXIにおけるステラーラとの比較では臨床寛解は同等でしたが 内視鏡寛解とDeep Remissionでステラーラを上回り 病変治癒効果のGrade Upを認めました。また回腸末端の内視鏡評価でもトレムフィアはステラーラより成績がよかったです。トレムフィアの皮下注導入を評価した大規模治験:GRAVITIにおいて皮下注導入と静注導入は同等の成績であり また回腸末端の内視鏡評価でも統計学的に有意差を持つ有効性を示しました、通常の大規模治験では通常小腸の評価は回腸末端に限られ深部小腸の評価はありません。GALAXIのサブ解析ですが日本においてダブルバルーン内視鏡を用いて深部小腸潰瘍に対するトレムフィアの効果が評価われました。48週の時点で50%の小腸潰瘍が改善し 潰瘍なしが25% 潰瘍なしびらんなしが13%でした。深部小腸にびらんのみの場合は経過観察してもよいかもしれませんが0.5cm以上の潰瘍があるときは治療介入したほうがその後の病状悪化を防ぐことができます。肛門に複雑痔瘻のあるクローン病患者さんはレミケードが適応ですが、ひどい肛門病変のないクローン病患者さんにはトレムフィアが1st Bioになってもよいかもしれません。