2025/11/26 Kyorin WEBサロン
腸内細菌叢移植の取り組みとIBD診療における新たな病病連携システム
大阪大学 消化器内科 特任助教 良原 丈夫 先生 講演
全世界では潰瘍性大腸炎とクローン病を代表とする炎症性腸疾患患者は約700万人存在すると推察され 有病率は日本は中ぐらいで 最も多い先進国は日本の4倍ぐらいあります。
潰瘍性大腸炎はヘテロな病態で、病態の推測が困難です。炎症性腸疾患の治療には寛解状態における非侵襲的はモニタリングと早期の対応が必要です。治療の真のエンドポイントは生涯のQOLの維持と臓器障害抑制です。今後は疾患の治癒も目指すことが大切です。
便カルプロテクチンは腸管特異性が高く、内視鏡寛解を予測できますが定量性は高くない。便を持ってきてもらう煩わしさがあります。LRGは多彩なサイトカインにより多彩な細胞から分泌され またCRPと違って恒常的な分泌があり正常値の幅が広く炎症がなくても0にはならない。肝細胞や好中球から恒常的に分泌されているが炎症刺激により血管内皮細胞や腸管上皮細胞からも分泌される。CRPより鋭敏で内視鏡スコアと相関する。
LRGとプロハプトグロビン(proHp)を測定することで治療の予測が可能になりました。潰瘍性大腸炎の患者さんにおいて LRG↑proHp↑;JAK阻害薬、LRG↑proHp↓;抗IL12/23抗体 抗IL23抗体、。LRG↓proHp↓;抗インテグリン抗体 が有効です。また活動性が高い患者さんほどこの予測があてはまります。
以前は腸内細菌叢の研究は培養できる腸内細菌しか研究できなかったのですが、シーケンスができるようになって腸内細菌全体(腸内細菌叢)の構成や機能解析ができるようになりました。腸内細菌叢を1つの臓器として、全体としてとらえ その研究が進んできました。5-ASA を不活化する酵素を腸内細菌叢が持っている患者さんはステロイド治療にすすんでしまう割合が高いことが報告されています。またクローン病患者さんの便中脂質濃度の網羅的解析によりリゾホスファチジルセリンがクローン病患者さんの便で増加していることがわかりました。
腸内細菌叢の乱れをdysbiosisと呼びます。Dysbiosisにより多様性がなくなり特定の菌種の異常な増殖により代謝性疾患 消化器疾患 精神神経疾患などが発症してきます。腸内細菌叢の多様性の消失による消化器症状に対し 多様性の改善をはかり症状を改善させるのが腸内細菌叢移植(FMT: Fecal Microbiome Transplantation)です。