2025/4/16 Ulcerative Colitis Web Seminar

潰瘍性大腸炎の未来を切り開く

-新たなStandard Of Careの可能性-

福岡大学医学部 消化器内科学講座 主任教授 平井 郁仁 先生が座長をされ 大阪回生病院 IBDセンター長 中村志郎 先生が講演されました

 

難治の潰瘍性大腸炎を紹介されるハイボリュームセンターでのデータですが初診の患者さんの40%がステロイドの全身投与が必要でした 60%が5-ASA製剤 で治療できました。5-ASA 製剤で治療できた患者さんのその後の難治化は12%でした。ステロイドで治療した患者さんで離脱できたのは25%、抵抗例は25% 依存例が50%でした

ステロイドが必要な患者さんが多くの方が次の治療が必要となります。全体の患者さんでは10年後では40%の方が難治化しそのうちの80%が依存例です。ステロイド難治例の治療は大きく分けると4つに分類されます

①免疫担当細胞内の刺激伝達系阻害薬

ステロイド JAK阻害薬 プログラフがここに分類されます。活動性に応じた投与量の調節(ステロイド プログラフ)、薬剤の選択(リンヴォック>ゼルヤンツ>ジセレカ)ができるので重症の患者さんにも使用可能で即効性があります。また腸管外合併症にも有効です。しかし自然免疫、獲得免疫の両者を広範囲に抑制するので副作用が多いため患者さんの選択に配慮が必要です

②TNFα阻害薬:レミケード ヒュミラ シンポニー

患者さんの病態とTNFα産生量に応じた投与量が十分なら即効性を発揮します マクロファージ 樹状細胞よりのTNFαの産生を抑制しますが同時にアポトーシスなどの機序によりTNFα産生細胞も破壊できます。TNFαの作用は多岐にわたるのでその抑制により腸管外合併症にも有効ですが同時に副作用にも注意が必要です。

③免疫担当細胞の浸潤抑制薬:エンタイビオ カログラ;炎症を起こす活性化T細胞の腸管病変進入を阻止するお薬なので腸管選択性が高く全身の免疫抑制はないので安全性が高いのが特徴です。その反面 直接炎症を抑えるのではないので疾患活動性の低い患者さんが良い適応です

④IL23/Th17系阻害薬:オンボ- スキリージ トレムフィア;過剰なIL23によるTh17細胞の病的な活性化と増殖を抑制することにより自然免疫・獲得免疫を間接的に抑制する

抗IL23抗体は現在3種類:オンボ- スキリージ トレムフィアがあります。IL23に対する親和性は オンボ-;ステラーラの5倍 スキリージ;ステラーラの34倍 トレムフィア;ステラーラの30倍です。これらの違いですがオンボ-とスキリージはFc受容体に変異を加えているのでマクロファージ表面のCD64を活性化することははありません。CD64が活性化するとサイトカイン産生増加や抗体製剤のクリアランスが増加するという炎症抑制にはマイナスの面もあります。トレフィアはマクロファージのCD64に結合してマクロファージから産生されるIL23を局所で捕捉し減少させる効果があります。

トレムフィアの潰瘍性大腸炎患者に対する大規模治験の成績をみると 効果の早さはJAK阻害薬ほどではありませんが4週ぐらいで効いてきます。多剤無効例にも有効でエンタイビオ ゼルヤンツの後に投与しても効果が出ています。維持療法にさいして導入時にCRP>0.3の患者さんには200mgX4週で維持したほうがよいでしょう。抗体製剤未投与例では200mgX4週維持のほうが100mgX8週維持よりも維持治療の成績がよいですが抗体製剤既投与例では両者の治療効果は差がありません。

トレムフィアはステロイド離脱効果がオンボー、スキリージより高くて 中和抗体産生率(2.1%)は低率です。

スキリージは抗体製剤未投与例に対する粘膜治癒率が高いです。オンボ-は多剤無効例に対する有効性が実臨床でも報告されています。ステラーラは12週間隔で投与できるので受診間隔が長いのを希望する患者さんによいです。