2025/4/5 IBDAを語る会
クローン病肛門病変の診断と治療戦略:最新エビデンスと未来への展望
四日市羽津医療センター 副院長 兼 IBDセンター長 山本 隆行 先生
くるめ病院 院長 野明 俊裕 先生がご司会され上記の演題で山本先生が講演されました。
クローン病患者さんにおける肛門病変の有病率は欧米人で4~14%ですが東アジア人は30~50%です。
日本人のクローン病患者さんは診断時40%が肛門病変を有し40歳未満の男性に多いです。30%のクローン病患者さんは肛門病変が先に発症します。クローン病の痔瘻は裂孔や潰瘍に感染 閉塞が加わり起こってきます。肛門から皮膚の2次孔が離れているのが特徴です。
クローン病の排膿性痔瘻に対する抗生剤療法ではフラジール500mg/1日2回よりシプロキサン500mg/1日2回の方が有効率は高く 副作用もフラジールのほうが多かったです。
抗TNFα抗体のレミケードでは短期的には5mg/kgの方が10mg/kgより有効で 5mg/kgで1年後の瘻孔完全閉鎖率は36%でした。ヒュミラも1年後の瘻孔閉鎖率30%です。治療開始時にシプロキサン(12週)を併用するとより有効です。
抗TNFα抗体を中止すると肛門病変の再発率は1年で36% 2年で42%で、抗TNFα抗体を再導入すると約80%が治療に反応します。
活動性の低い肛門病変はステラーラ エンタイビオでも治療できます。リンヴォックは12週で効果を認めますが52週では成績が下がります。維持治療は15mg/日の方が45mg/日より成績がよかったです。ネットワークメタアナリシスによる肛門病変に対する有効性はインフリキシマブが最も高く その次はヒュミラで リンヴォックはヒュミラと同程度です。スキリージはまだデータが不足しています。クローン病痔瘻の治療は内科治療と外科治療の併用がより有用です。キチンと外科的に排膿して時期をおかずバイオ製剤を導入するとよいでしょう。
クローン病は病歴が長くなると直腸癌 肛門癌が増加してきます。癌が発症した方の病悩期間は平均18年です。10年を超える肛門病変があるクローン病患者さんは 痔瘻癌 肛門癌の早期発見のため、CT, MRI, 麻酔下の生検などによる定期的な経過観察が必要です。