2025/5/15 Ulcerative Colitis Web Seminar
潰瘍性大腸炎の未来を切り開く
-新たなStandard Of Careの可能性-
富山大学 炎症性腸疾患内科 特命教授 渡辺 憲治 先生が座長をされ、 東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 教授 松岡 克善 先生がご講演されました。
潰瘍性大腸炎を患っていても 生涯にわたって患者さんが 健康な方と かわらない普通の生活がおくれるようにすることが治療の目標です。そのためには潰瘍性大腸炎の再燃 入院 手術 発癌を減らすことが必要です。この目標を実現するには大腸内視鏡検査でMES:0 内視鏡的寛解を達成するように治療していくことが肝要です。
ウィルス、細菌は樹状細胞よりIL12 を介してnaïve T細胞をTh1細胞に分化させIFNγを介してマクロファージよりTNFαを放出させます。真菌 細菌は樹状細胞よりIL23を介してnaïve T細胞をTh17細胞に分化させIL17を介して炎症の場に好中球を引き寄せます。
生体は細菌感染に対して免疫反応を起こしますが 潰瘍性大腸炎、クローン病では感染がないのにこのような免疫反応が起こっています。IL-23は炎症の根源の部分をコントロールしており IL23受容体は炎症性腸疾患の疾患感受性遺伝子でもあります。IL23を抑制すると潰瘍性大腸炎やクローン病には有効ですが関節リウマチには無効です。腸粘膜ではCD64陽性の単球が炎症の一員となりIL23を産生していますが トレムフィア(グセルクマブ)はこのCD64陽性単球よりのIL23産生も抑制することができます。つまり樹状細胞と単球からの両方のIL23を抑えることができます。
全世界で行われた大規模治験の成績では12週の寛解率:23%、有効率:60% 完全粘膜治癒(MES:0);15% 組織学的改善:40%でした。12週で改善を示した患者さんを44週まで治療を継続した場合 200mg 4週毎投与で寛解:50%、100mg 8週毎投与で45% 完全粘膜治癒も両者でほぼ同じ成績で34%でした。12週で改善するとその後の再燃は少なく また安全性は高く特徴的な副作用はありません。Advanced therapy を行っていない患者さんのほうがAdvanced therapyの経験のある患者さんより良い成績でした。
抗p19抗体は3剤:スキリージ、オンボ-、トレムフィア があります。大規模治験においてはこの3剤の成績はぼぼ同等で Advanced therapy を行っていない患者さんに対する短期の寛解率は30%程度でした。Advanced therapyの経験のある患者さんに対する短期の寛解率は10%程度でこれも同じでした。トレムフィアの特徴は維持期に効果減弱したときに増量短縮(100mg 8週→200mg 4週)できるところです。3回点滴治療した12週目に寛解に達していない場合は200mg 4週で維持治療するのがよいかもしれません。