2025/7/17 UC Web Seminar

イムノグロブリンから考える潰瘍性大腸炎治療選択

炎症性腸疾患における抗IL23-p19 抗体製剤の成り立ちと各薬剤の違い

構造と機能から見たオンボ-の特性

 

JCHO東京山手メディカルセンター 炎症性腸疾患センター センター長 深田 雅之 先生が上記の演題で講演されました。

 

潰瘍性大腸炎の病態は腸内細菌に対するT細胞の異常活性化と考えられ、その結果 腸粘膜の間質に多くのT細胞が増加します。高脂肪食、自律神経異常 メンタルヘルスの悪化などによる腸粘膜の粘液層の減少が原因となり 細菌、真菌、食事抗原などが頻回に抗原提示細胞を刺激すると、結果としてmemory T細胞が増加し免疫寛容が破綻し炎症性腸疾患の発症を引き起こします。

抗原提示細胞は貪食する抗原によって産生するサイトカインが決定され、そのサイトカインによりnaïve T細胞は別々のT細胞に分化していきます。IL12によりTh1細胞、IL4によりTh2細胞、IL-6またはIL23によりTh17細胞、IL10とTGF-βにより制御性T細胞にそれぞれ分化します。Th17細胞はIL17, IL21を産生し 腸管病原菌感染 真菌感染 自己免疫反応などに関与します。人間のTh17細胞は腸管内に多く存在し炎症性腸疾患になるとさらに増加します。

ミリキズマブ(オンボ-)はIL-23を特異的に中和する抗体製剤です。IL23のみを抑制する抗体製剤としては他にスキリージ トレムフィアがあります。オンボ-はIgG4で、スキリージ トレムフィアはIgG1です。免疫グロブリンはIgG1からIgG4まで4種類あります。IgG1とIgG4の違いは IgG4はFc受容体活性がないので 余分な細胞性免疫、抗原提示細胞の活性化を起こしません。またIgG1の糖鎖活性は免疫反応を起こしやすい構造ですがIgG4は免疫反応を起こしにくい構造です。IL23に対する接着効率ではスキリージはステラーラの5倍ですが、オンボ-は10倍です。これらのことからオンボ-は IL23の中和に特化しoff-target効果が少ない薬剤と考えられています。

オンボ- スキリージ トレムフィアの潰瘍性大腸炎に対する臨床効果を大規模治験の成績より間接比較すると 短期の有効性では オンボ-<トレムフィア<スキリージ、長期の維持率では スキリージ<オンボー<トレムフィア でした。効果減弱の原因として抗薬剤抗体の割合は一般に3%~5%とされています。ひとつの抗IL23抗体製剤で2次無効になった時に別の抗IL23抗体製剤に変更しても効果が期待できます。現在多くの抗体製剤 経口薬が使用できるようになったので 病態がゆるせば 低リスク 長期安定 QOLの高い治療の選択が可能となりました。