2025/7/27 IBD Specialists of Private Clinic 2025 静岡 ランチョンセミナー
潰瘍性大腸炎 内科治療の最前線
~新たなSegment S1p受容体調節薬 Etrasimodを中心に~
大阪回生病院 消化器内科 IBDセンター長 中村 志郎 先生
ベルセピティ®(エトラシモド)錠は、内服薬で免疫細胞の移動を調節するスフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P)受容体をターゲットにすることで炎症を抑える効果があるとされています。リンパ節からTリンパ球が血管内に移動するのを抑制し、炎症を軽減します。現在潰瘍性大腸炎治療に使用できるもう一つのS1P調節薬としてゼポジア®(オザニモド)があります。
S1P受容体にはS1P1-S1P5の5種類のサブタイプが存在します。ゼポジアはS1P1とS1P5の2種類を抑制しますが ベルセピティはS1P1、S1P4, S1P5の3種類を抑制します。ゼポジアは代謝された後の代謝産物にも生理活性があり炎症を抑えるメカニズムの1つとして機能しているようです。
ベルセピティはB細胞 CD4+T細胞 CD8+T細胞をターゲットにしています。白血球除去療法は好中球 マクロファージを除去するので自然免疫を抑制しますが ゼポジア ベルセピティは獲得免疫の抑制が主体です。健常人では服用後5週ぐらいで末梢の白血球は最低値になりますが中止すると1週間で回復します。潰瘍性大腸炎患者さんは服用後2週ぐらいで末梢白血球数は最低値になります。<500になる割合は30%~50%、<200が1~5%です。投与前にリンパ球数<800の患者さんは注意が必要で、大規模治験では白血球のうちリンパ球数<200で投与中止としていました。投与中止2週間すると>500に復帰します。Th細胞の80% B細胞の60%、マクロファージの10%ぐらいが減少しますがNK細胞は40%増加します。
ベルセピティの治験では重篤な感染症、通常の感染症の発症は増加しませんでしたが その理由は 白血球減少しますがその機能が保たれることと、液性免疫は影響が少ないことが考えられます。ベルセピティは妊婦さんには禁忌です、肝排泄なので腎機能の悪い患者さんにも使用できます。治験では短期12週の有効率60% 寛解率27%、1年後の有効率50%、寛解率33%です 1年後の粘膜治癒率 MES1:37% MES0:26% MES0-1+Geboes<2の完全粘膜治癒は27%でした。効果発現は早く投与後2週で効果がでてきます。治験の成績を解析するとバイオ未投与かバイオ1剤投与後の患者さんにより有効です。2剤以上使用後の患者さんには効果が落ちます。エンタイビオ投与後のベルセピティ投与は効果が落ちます。長期の成績では60歳より高齢者に有効性が高かったです。
副作用は重篤な物はありません。徐脈 黄斑浮腫 関節痛 高血圧などです。中止になるような副作用は少ないです。イムラン不耐やステロイド+イムランでステロイド減量中に再燃した患者さんなどがベルセピティ治療の最適の患者さんです。海外ではイムランのかわりに使用されています。