2025/7/31 Skyrizi UC Internet Live Seminar

潰瘍性大腸炎におけるスキリージの可能性

~患者さんの生活をまもるための治療戦略~

 

名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部 准教授 中村 正直 先生が座長をされ

山口大学医学部付属病院 IBDセンター 副センター長 橋本 真一 先生が上記の演題で講演してくれました

 

潰瘍性大腸炎 クローン病の治療を考える時 その患者さんの長期的な合併症を予防し予後を改善させることが第一しなければなりません。どのお薬も最初に投与したときが最も有効率が高いので第一選択薬が重要です。最初のお薬が効果なく有効なお薬にいきつくまでの時間をできるだけ短くしなければなりません。

入院治療が必要になりそうな患者さんの時は治療の即効性を重視し第一選択はレミケード リンヴォックなどになります。

重篤な感染症の既往 癌の既往 高齢 複数の合併症を有する患者さんなどはステラーラ エンタイビオ、抗p19抗体(スキリージ オンボ- トレムフィア)になります。

ネットワークメタアナリシスにおける臨床寛解での成績では上位から リンヴォック スキリージ トレムフィア ステラーラ レミケードの順です。

IL23はTh17細胞の分化に必要ですが直接分化させるわけではありません。非病原性Th17細胞はIL17とIL10を分泌します。IL10は炎症抑制性に働くサイトカインです。非病原性Th17細胞にIL23が加わるとIL10を分泌しなくなり病原性Th17細胞に分化します。またIL23は調節性T細胞の機能低下とアポトーシスを誘導します。異所性(3次)リンパ節を誘導し多くのT細胞を動員します。スキリージは抗p19抗体であるのでIL23産生を抑制しますが同時にIL39も抑制します。IL39はB細胞より放出され好中球を動員する働きがあります。

スキリージの潰瘍性大腸炎の大規模治験の成績では naive症例に対する52週の粘膜治癒 粘膜改善率が高い(76%、52%)のが特徴です。副作用は上咽頭炎 頭痛 関節痛などで特異的のものはありません。スキリージの投与方法における有用な点は効果減弱した際に1200mg静注し再導入できることです。20週を過ぎたら前回投与後 8週をまたず効果減弱時にすぐに再導入できます。その後は360mgで維持治療を継続します。夜間排便があるような患者さんには治療を強化したほうがよいでしょう。