2025/09/27 UC Expert Seminar 2025
1.新しい潰瘍性大腸炎治療薬 ベルスピティを一から理解する
東邦大学医療センター佐倉病院 消化器内科 教授 松岡 克善 先生
2.多様化する潰瘍性大腸炎の治療選択 -ベルスピティ錠をどう位置付けるか-
辻仲病院柏の葉 消化器内科部長 IBDセンター長 竹内 健 先生
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)はスフィンゴ脂質の1種で S1Pの受容体の種類によって、細胞増殖 アポトーシス 細胞運動 神経 免疫など幅広い領域の生理活性を有します S1P受容体にはS1PR1-S1PR5の5種類のサブタイプが存在します。S1PR1, S1PR4、S1PR5は免疫に関与し S1PR1はリンパ節からのリンパ球の移出に関与します。ベルスピティはS1PR1、S1PR4, S1PR5の3種類を調整します。
ベルスピティを服用すると7日間で末梢血のリンパ球数が半分程度に低下し、中止すると約1週間でもとの数値に回復します。大規模治験ではリンパ球数<200に低下した割合は3.5%、<500に低下した割合は40%でした リンパ球数<200に低下したときはベルスピティ内服を中止します。>500になったら再開できます。T細胞 B細胞は低下しますがマクロファージやNK細胞は低下しません。このように自然免疫は維持されるので これが治験において感染症が増加しなかった理由と考えられます。
ベルスピティの副作用で徐脈があります、服用後2時間で8bp低下しますが臨床的には問題になりません。黄斑浮腫も臨床的に問題になることは少ないですが糖尿病の患者さんは投与前に眼科受診が必要です。
現在潰瘍性大腸炎治療に使用できるもう一つのS1P調節薬としてゼポジア®(オザニモド)があります。ゼポジアよりベルスピティのほうが刺激の入り方が少ないので用量調節が必要ありません。またゼポジアはリンパ球減少のため中止した場合 回復に1~2ヶ月かかります。
ベルスピティの大規模治験は実臨床に近い形のTreat-throughデザインで行われました。治験では主要評価項目の12週および52週の寛解率:27%、32%でした。4~8週で効果が出てきますが16週ぐらいで効果が安定してきます。日本人のデータでは12週および52週の寛解率:14%、25%でした。感染症や日和見感染は増加していません。4年の長期観察では重篤な副作用11%、中止に至った副作用11%でした。バイオ製剤未使用やバイオ使用歴1剤までの患者さんにより有効性が高く、病型では直腸炎型のほうが全大腸型よりもより効果が高い結果でした。内服薬なので服薬アドヒアランスがよい患者さんが適当でしょう。ステロイド難治例の患者さんには早くAdvanced-therapyを実践して社会的生産性を上げることが最近提唱されています。