炎症性腸疾患(IBD)の治験とは
治験とは新しいお薬を開発するための臨床試験のことで、石田消化器IBDクリニックでは炎症性腸疾患(IBD)の治験を行っています。
新しいお薬を患者様に使用できるようになるまでには、自然界にある動物・植物・鉱物のほか、バイオテクノロジーなどの科学技術により生み出された物質の中から、製薬会社、研究所、大学などが新しいお薬の候補となるものを選び、動物などを用いてその有効性や安全性などを多くの試験を行います。この試験を非臨床試験と言います。
そして非臨床試験を行った後、最終段階として健康な方や患者様などにご協力いただき、実際効果があるのか、大きな副作用は起こらないのかなどを確認するための試験が臨床試験なのです。そして臨床試験のうち、新しいお薬として厚生労働省に認めてもらうために必要な試験のことを「治験」と言います。
当クリニックが治験を行う理由
現在、IBDに対して効果的なお薬がたくさん登場していますが、それでもすべての患者様に効果的なわけではありません。
なかには、日本で使用できる全てのお薬を使っても症状が改善されない方もおられます。
治験によって生み出される新しいお薬は、そうした難治の患者様の希望となります。
また、現在、今あるお薬で症状が上手くコントロールできている方も、やがてそのお薬では効果が得られなくなる恐れがあります。
つまり治験とは現在、難病で苦しまれている方、そして未来の患者様の治療に繋がる大切なものなのです。
当クリニックではIBDの専門クリニックとして、難治で苦しむ現在の患者様はもちろん、将来の患者様、そして未来のIBD医療を見据えて治験に積極的に取り組んでおります。
治験の流れ
1.ご連絡
治験への参加をご希望の患者様には、ご参加いただけるかどうかを含めて相談に対応いたしますのでお気軽に当クリニックへご連絡ください。
他の病院やクリニックに通院している方でも相談に応じます。
ご連絡先
📞 097-529-5777 (クリックで発信)
2.医師の診察
診察を行って患者様の病気の状態を診察し治験の参加条件に合っているかを確認します。患者様によっては診察の結果、ご参加いただけない場合もあります。その場合には最善の治療法をご提供いたします。
3.治験コーディネーターからのご説明
当クリニックに在籍している治験コーディネーターから、治験にご参加いただく際の通院スケジュール、メリット・デメリット、注意事項などを同意文書・説明文書を用いて詳しく説明させていただきます。
4.治験開始
治験コーディネーターからの説明を受けたうえで、ご協力いただけるとなった場合には同意文書に署名をしていただいてから治験を開始いたします。
事前に説明した頻度で当クリニックへお越しいただき、検査、診察などを行います。
治験の期間
治療の開始
一般的に治験開始後、採血や便検査などの基本的な検査に加えて、内視鏡検査などの画像検査を行います。
通院の間隔は治験によっても異なりますが、2週間から4週間に1回程度です。
1年後
3か月程度で終わる治験もありますが、新しいお薬の効果があった方には改めて説明したうえで引き続き1年間経過を診ます。
2~3年後
1年後にお薬の効果の有無を確認し、効果があった方は治験によっても期間は異なりますが、2~3年程度を目安に引き続き経過を診ます。
当クリニックで行う治験
石田消化器IBDクリニックでは炎症性腸疾患(IBD:潰瘍性大腸炎・クローン病)の治験を行っています。現在広く使われているレミケード®やステラーラ®、ヒュミラ®、エンタイビオ®などの治験に20件以上治験責任医師として携わってきました。
2016年11月の開院当初から治験の実績を増やしています。治験は研究の側面はありますが、様々なタイプの治験が存在しますのでお気軽にお問合せ下さい。
当院で募集中の治験
適応疾患 (剤型) |
相 | 参加条件 | 患者様用説明資料 | 医療関係者用説明資料 | 募集期間 |
---|---|---|---|---|---|
潰瘍性大腸炎(経口剤) | Ⅲ | ・潰瘍性大腸炎と診断されている方 ・ステロイドや生物学的製剤等のお薬で治療されている方、治療経験のある方(16歳以上) |
PDF資料 | 2023年10月~募集中 | |
潰瘍性大腸炎 (カプセル剤) | Ⅱ | ・活動性疾患(直腸出血および下痢)を有し、3か月以上前にUCと診断された方 ・治療を受けていないか、または治療の効果が不十分な方 |
PDF資料 | 2023年7月~募集中 |
当院で募集中の研究等
過去の実績
年度 | 対象疾患 | 相 | 一般名 |
---|---|---|---|
2014年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | ベドリズマブ |
2014年 | クローン病(CD) | Ⅲ | ベドリズマブ |
2013年 | クローン病(CD) | Ⅲ | アダリムマブ |
2013年 | クローン病(CD) | Ⅲ | ブデソニド |
2012年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | ゴリムマブ |
2012年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅱ | ブデソニド |
2012年 | 小児潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | インフリキシマブ |
2012年 | 小児クローン病(CD) | Ⅲ | インフリキシマブ |
2011年 | 胃・十二指腸潰瘍 | Ⅲ | ウステキヌマブ |
2011年 | 胃・十二指腸潰瘍 | Ⅲ | ボノプラザンフマル酸塩 |
2010年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | 5‐アミノサリチル酸 |
2010年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅱ | 5‐アミノサリチル酸 |
2007年 | 逆流性食道炎(GERD) | Ⅲ | エソメプラゾールマグネシウム水和物カプセル |
2006年 | クローン病(CD) | Ⅱ | ブデソニド |
2006年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | インフリキシマブ |
当院の治療実績(終了した治験)
年度 | 対象疾患 | 相 | 一般名・開発コード |
---|---|---|---|
2021年 | クローン病(CD) | Ⅲ | ABT-494 |
2021年 | クローン病(CD) | Ⅲ | CT-P13 |
2019年 | 鉄欠乏性貧血 | Ⅲ | NS-32 |
2019年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | ABT-494 |
2018年 | クローン病(CD) | Ⅲ | SHP647 |
2018年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | AJM300 |
2018年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | SHP647 |
2018年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | Ⅲ | FE 999315 |
2017年 | 潰瘍性大腸炎(UC) | 第2b/3 | Filgotinib |
治験のよくあるご質問
治験で使用するお薬は新しいものなので、赤ちゃんにどのような影響が出るかわかっていない部分がありますので、基本的に男性・女性とも避妊していただくことになります。
当クリニックは主に行っている治験は、主に第Ⅰ相試験・第Ⅱ相試験で安全性が確認されたお薬や海外では承認されているものの日本では使用できないお薬などです。そのため、副作用はある程度予測できるものとなっていますが、治験は患者様の安全保護と人権確保のため、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)という法令に基づき十分に注意を払って実施されます。また、副作用で健康を害することが生じた場合は、ただちに適切な処置が行えるような体制を整えています。体調等で不安を感じた場合や不安になる点がございましたら,どんな小さなことでもご相談ください。
治験によっても異なりますが、プラセボを使用せず既に市販されている薬と治験薬(新しいお薬の候補)を比較する治験もあります。
プラセボを使用する治験においては、通常、ご協力いただく方を2つのグループに分けます。1つは治験薬(新しいお薬の候補)を使用するグループ、もう1つは偽薬(プラセボ)を使用するグループです。
こうしてグループ分けするのは、「病は気から」という言葉があるように、「効果がある」と思って飲むとプラセボでも数%の確率で効果が現れる場合があるからです。
こうした自然経過による症状の改善と、実際にお薬を使った時の効果を比較して、「お薬を使った場合の方が治るパーセンテージは高い」ということを統計学的に証明するために治験薬とプラセボの2種類を使用します。
なお、どの方に治験薬・プラセボが渡されているのかは、ご本人だけでなくクリニック側もわかりません。
それはお薬を評価する側(クリニック側)にバイアスがかからないようにするためです。これをダブルブラインド(二重盲検)と言います。プラセボにあたった場合でも来院時に詳細な検査、診察を行い、悪化が見られた場合には迅速に対応しますのでご安心下さい。
全ての治験において偽薬(プラセボ)が使用されるわけではありませんが、プラセボにあたる確率は治験によっても異なります。患者様にしっかりご理解いただいた上で参加いただけるよう詳しく説明させていただきます。
治験がスムーズに実施されるように、患者様、医療機関、治験依頼者(製薬会社)間の調整や支援をするスタッフです。
治験ではお薬の効果を科学的に評価しなければいけないため、まずは現在使用中のお薬をウォッシュアウト(使用中のお薬の効果が切れるまで待つこと)する必要があります。
そのうえで新しいお薬の投与を開始するのですが、この時もお薬の飲み方、お薬を投与するペース、効果を確認する頻度・間隔など細かな決まりがあります。
IBDの患者様は若い世代の方が多いので、こういったスケジュールについて詳しくご説明しておかないと、仕事の都合などで通院間隔が守れないという場合があります。
そうした治験にご協力いただく際の注意事項、スケジュールの調整、そして治験にご協力いただくかどうかの最終的な確認など全面的に患者様をサポートすることが治験コーディネーターの役割となります。
問題ありません。
治験を続けられるか、途中で止められるかはまったくの自由です。
もちろん、それに対してペナルティのようなものはございませんので、ご安心ください。
「クリニックやドクターに迷惑をかけるのでは?」とご心配になる方もおられるでしょうが、何ら迷惑なことはありませんので、途中で気が変わられた時は気兼ねなくお申し出ください。
基本的に治験薬(新しいお薬の候補)を服用している期間中の治験薬の費用や治験のための検査代は製薬会社が負担します。ただし、初診料や再診料あるいはいつも使用されている薬剤費などは今までどおり健康保険の種類に応じて患者様に窓口でお支払いいただくことになります。
治験に参加されている患者さんのご負担(通院にかかる時間的拘束や交通費など)を軽減することを目的としてお支払いされる費用のことです。
具体的な費用等については治験に参加される際に治験コーディネーターから説明いたします。