2020/12/12 Humira National Symposia 本邦におけるIBD治療 ~現状と今後の展望~

慶應義塾大学医学部 消化器内科 教授 金井 隆典先生講演

 

潰瘍資性大腸炎は1976年には965人 現在は22万人以上 クローン病は1976年には128人が現在は7万人以上とすごい勢いで患者数が増加しており 今では日本人の400人に1人が潰瘍性大腸炎またはクローン病にかかっています。この増加の原因は環境と生活習慣の変化から腸内細菌叢の変化が起こったことではないかと推測されています。1998年には内科治療はペンタサとステロイド、エレンタールしかなく それらで効果がなければすぐに手術になっていました。現在では抗体製剤をはじめとする多くの分子標的薬が臨床で使用できるようになり(レミケード、ヒュミラ、シンポニー、ステラーラ、エンタイビオ、ゼルヤンツ、プログラフ)患者数の増加に伴い治療選択肢も多様化しました。治療目標は潰瘍性大腸炎 クローン病に共通しているのは粘膜治癒です。これが達成されると再燃 入院 手術 癌が減ります。これを達成し維持するためには維持治療が寛解導入治療同様に大変重要です。クローン病では病気が発症したらできるだけ早く治療を開始することが大切です。病気になってから治療開始までの期間が短い方がどのお薬もよく効くからです。治療目標は臨床症状なし+CRP:正常+粘膜治癒の達成持続です。経過観察するときに臨床症状だけを指標にすると治療が遅れるので臨床症状に加えてバイオマーカー(CRP, 便中カルプロテクチ)を利用して厳密にモニタリングして治療を強化すると 症状だけで治療するより粘膜治癒率を上げることができるとする研究があります(CALM、クローン病)モニタリングの方法として便中カルプロテクチンに加え最近血中マーカーであるLRGが認可されました。潰瘍性大腸炎においてLRGは内視鏡検査の重症度と比例することが確認されています。このことは採血でLRGを測定すれば大腸カメラをしなくても粘膜がどの程度荒れているかが判るということです。