2021/1/26 Takeda IBD全国Webセミナー

クローン病の診断とモニタリング そしていまある課題

~エンタイビオの果たす役割~

東京女子医科大学 消化器内科 准講師 大森 鉄平先生講演

 

2021/1/30 Crohn’s disease Expert Meeting in Kyusyu

~内視鏡観察からCD治療と粘膜治癒までの最新動向~

平井 郁仁先生(福岡大学)、上村 修司先生(鹿児島大学大学院)、江崎 幹宏先生(佐賀大学)

 

クローン病に関する講演が連続であったので講演内容を勝手ながらまとめさせていただきました。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)は日本において増加し現在では1000人に2~3人がこの病気を持っています。炎症性腸疾患の中には診断が難しい患者さん(IBDU)もいて 全体のうち小児なら4~12% 大人なら4~7%がクローン病か潰瘍性大腸炎か診断がつかない方がいます。小児には単一の遺伝子異常のために発症する病気で炎症性腸疾患によく似た病気(monogenic disease)があります。クローン病の特徴は放っておくとお腹の手術(腸管切除)を受けなければならなくなることです。若い時に発症し瘻孔や痔瘻などの肛門病変を併発し病気が大腸だけでなく小腸や十二指腸 胃に広がる患者さんは特に手術になりやすいです。狭窄 瘻孔ができると手術になるのでそれらができる前に診断して治療を開始することが大切です。治療にさいしては病気の活動性に加え 今後どうなるか(経過、予後)を考慮した対応が必要です。クローン病患者さんの70%~80%に小腸にびらん 潰瘍があり小腸病変の的確な評価が必要です。小腸病変を改善できれば血液データ 再燃 入院 手術の成績が良くなります。小腸病変の診断に役立つのが小腸カプセル内視鏡です。ケルクリング襞に輪状に多発するびらん アフタがあればクローン病と診断されます。小腸カプセル内視鏡(SBCE)は狭窄が心配な患者さんは事前に溶けるカプセル(パテンシーカプセル)で検査すればSBCEが狭窄に引っかかることを防げますがパテンシーカプセルが溶けた時に残るセロハンで腸閉塞になることがまれにあります。SBCEでモニタリングして小腸病変を評価して早めに対応すると手術が減るというデータもあります。小腸カプセル内視鏡は狭窄があると施行できないのでそのさいは血液検査のLRGを用います。腹痛 下痢などの症状がないのにもかかわらずLRGが上昇しているときは小腸病変の悪化のことがあります。 クローン病の病変は粘膜だけでなく腸管全体にわたるのでMRE, CT、腹部エコーにより腸壁全体の評価も大切です。治療目標は腹痛、下痢などの症状を素早くおさえ 採血検査ではCRPを正常値化して、その後はLRG、便カルプロテクチン(日本ではクローン病は測定できません)を正常値化し、長期には内視鏡検査で粘膜治癒を目指します。抗TNF-α抗体(レミケード、ヒュミラ)を始めてクローン病患者さんに投与すると5年後には半数のかたが他の治療が必要になります。小腸病変は狭窄してくるので小腸バルーン内視鏡で拡張するとレミケード ヒュミラの効きがよくなります。治験の成績ではレミケード ヒュミラ ステラーラ エンタイビオいずれも小腸病変より大腸病変の方がより治っていました。瘻孔の治療成績はレミケード、ヒュミラが他の薬剤よりも良い成績です。エンタイビオが最も適した患者さんは高齢者や感染が懸念される方、軽症で 病気になってからの期間が短い方です。生物学的製剤を使用するときは最初に使用するとよく効きますがレミケード ヒュミラが効かなくなってから投与してもあまり効きません。可能なら投与後3か月してから効果があったか判断します。