2021/4/16 日本消化器病学会 シンポジウム7 IBDのトータルマネージメント

 

上記のシンポジウムに際して内科は杏林大学の久松先生 外科は兵庫医科大学の池内先生が基調講演をしてくれました。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病)は長期でみると手術を受ける患者さんが多いのですが手術を減らすためにはまずは身近な目標 最初は臨床寛解(下痢 下血 血便 粘血便 発熱などの症状がなくなる)、次にマーカーの正常値化(CRP,便中カルロテクチンなど)その次に粘膜治癒(内視鏡検査で潰瘍がない)を実現していくことです。生物学的製剤は発症してから3年以内の炎症が強い時期に使用するとよく効きます。潰瘍性大腸炎、クローン病患者さんからの発がん率は減ってきていますが 若年で発症した方や炎症が強い方には発がんが多いので定期的な内視鏡検査(サーベイランス)が必要です。サーベイランス内視鏡すると癌も早期で発見でき手術が減ります。潰瘍性大腸炎は手術年齢が高齢化してきています。また難治で手術することは減り、癌が手術理由になることが増加しています。65歳以上で発症する高齢発症者のなかには重症で緊急手術になる方がいます。手術時期の見極めが大切です。サーベイランス内視鏡のおかげで潰瘍性大腸炎に合併した癌は生存率が伸びています。クローン病の手術は全体として減ってきています。特に再燃による狭窄 瘻孔が理由の手術は減りましたが発がんによる手術は増加しています。また再手術の時は30%の方が最初の手術の吻合部以外の部位を手術しています(これを防ぐには術後の治療が肝要です)。クローン病が原因の発がんは特に若い人で増加し、術後5年の生存率が50%程度で予後はよくありません、ここが潰瘍性大腸炎の発がんとの違いで 痛みと狭窄のためサーベイランス内視鏡ができないのがその理由でしょう。クローン病には直腸肛門病変の手術が多いのも特徴です。