2022/5/27 カログラ錠Web講演会
潰瘍性大腸炎治療の現状と最新治療について
上記の演題で 新規経口潰瘍性大腸炎治療薬 カログラについて 慶應義塾大学 消化器内科教授 金井先生が座長をされ 兵庫医科大学炎症性腸疾患センタ-准教授 渡辺先生と東邦大学医療診療部佐倉病院 消化器内科教授の松岡先生が講演してくれました。
潰瘍性大腸炎治療の基本は 5-ASA製剤(ペンタサ アサコール リアルダ サラゾピリン)ステロイド アザチオプリン(イムラン アザニン)、局所製剤を使いこなすことです。また最近5-ASA不耐患者さんが増加しましたが 少量から始めれば5-ASA不耐の患者さんの半数にサラゾピリンは使用可能で、局所製剤も使用可能です。
カログラは白血球と血管内皮細胞の接着因子であるα4インテグリンを抑える経口の低分子化合物(内服薬)です。接着因子にはα4β7とα4β1があります。α4β7は腸に特異的に発現しますがα4β1は炎症の激しくなったどんな臓器にも発現します。α4β7を抑えるお薬がエンタイビオです。カログラのポジショニングは症状の激しくないステロイド依存例、5-ASA高用量で不応、5-ASA不耐例です。同様の作用機序のお薬としてバイオ製剤のエンタイビオがあります エンタイビオは軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に投与すると実臨床では寛解率40% 有効率60% 効果減弱率30% 副作用:皮疹 頭痛 感染症などです。カログラは維持療法には使用できませんのでカログラ有効例にはエンタイビオを維持治療として使用することも可能です。白血球遊走を抑えるお薬(カログラ エンタイビオ)は炎症には即効性がないので軽度のうちに投与したほうがよいでしょう。カログラの作用機序はα4インテグリンの発現低下による炎症部位への白血球遊走抑制です。α4インテグリンを抑えると脳へのリンパ球遊走も抑制してしまいます。カログラと同じ作用機序のバイオ製剤:タイサブリ(ナタリズマブ:抗α4インテグリン抗体)の長期使用により海外では非常にまれですが致死的な副作用:進行性多巣性白質脳症(PML)の発症が報告されています。PML発症のリスクは 抗JCV抗体陽性(日本人は70%が陽性)、投与2年以上、免疫調節薬の併用 です。 カログラではこれまで治験においてPML発症例はありませんが潜在的なリスクになりますので実地臨床では6ヶ月以内の投与を遵守することが大切です。日本人で治験が行われ対象は中等症の潰瘍性大腸炎で ほとんどが5-ASA製剤で効果がなかった患者さんでした。 短期治療成績(8週)は寛解:23%、有効:67%、粘膜治癒(MES;0または1):55%、完全粘膜治癒(MES;0):14%、この治験は臨床寛解を達成するとカログラ投与終了になりますが投与終了後 平均10ヶ月で再燃し、血便が完全に消失した患者さんは1年で50%が再燃、粘膜治癒した患者さんの30%が再燃しました。その場合カログラ再投与で導入時と同程度の有効性が得られています。実地臨床では寛解になったら短期間ですがもう少し投与して終了するのがよいでしょう。カログラが有効ですが中止すると 頻回に再燃する患者さんの維持療法にはエンタイビオがよいと思われます