2022/6/24 潰瘍性大腸炎の治療を考えるWeb

「潰瘍性大腸炎における薬物治療戦略」

 

大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授の中村 志郎先生が上記の演題で講演してくれました 潰瘍性大腸炎治療の目標は 内視鏡的には粘膜治癒、臨床的にはステロイドフリー寛解の維持です。潰瘍性大腸炎患者さんにステロイドを投与するとそのうちの30%-40%の患者さんはステロイドが効かなくなります(ステロイド難治症例)。ステロイド難治症例の80%はステロイド依存症、20%がステロイド抵抗例です。ステロイド依存症例は チオプリン(イムラン アザニン ロイケリン)で加療しますが チオプリンは副作用が多くイムランで治療すると全体の50%の患者さんは長期に服用することができません。潰瘍性大腸炎の基本治療:5-ASA、ステロイド イムラン(アザニン)を用いて治療しても長期ステロイドフリー寛解を達成できるのは20%、ロイケリンを用いても35%程度です。そこでバイオ製剤の登場となります。レミケード ヒュミラ シンポニーは抗TNFα抗体です。

TNFαは自然免疫の主役で 活性化マクロファージ、一部のT細胞などより分泌され 細胞内signalはNF-κBで 炎症と自然免疫を興しかつ促進し さらに獲得免疫の準備もします。抗TNFα抗体(レミケード、ヒュミラ シンポニー)実臨床での長期のステロイドフリー寛解率は短期に寛解導入できた患者さんでは以後約60%維持できます。全体では30%程度です。大規模治験における1年後のステロイドフリー寛解率をランキングすると

ゼルヤンツ ステラーラ レミケード ヒュミラ エンタイビオ シンポニーです

ステラーラは抗IL12/23抗体ですが IL23は細胞内signalはJAK-STATで Th17を介して獲得免疫と自然免疫両方を惹起促進させます。TNFαには間接的に作用します。

治験の成績では短期の寛解率は15%、有効率は60%で 鋭い切れ味のような効果はありません。8週毎に投与するとバイオ抵抗例にも有効です。治験の長期成績ではステロイドフリー寛解率は35%程度です。実臨床では40%を超えると予想されます。一度効果がでたら2次無効になりにくいのが特徴です。安全性も高く 重篤な副作用は8%程度でプラセボ:10%と差はありません。主な副作用は上気道炎 頭痛 関節痛 疲労 発疹 肝機能障害などですがこれらもプラセボを超える発症率はありません。海外の実臨床ではバイオ不応例に対する短期の寛解導入率は30%~40%です。またレミケード エンタイビオが無効な患者さんに対して次に使用する場合 ステラーラとゼルヤンツは同等の効果です。ステラーラの好適症例は いろいろな治療をしたけれども症状がくすぶっている、中等症ぐらいのステロイド依存例の再燃です