2022/6/20 Crohn’s Disease Web Seminar

-StelaraⓇ for Small Bowel Disease-

ウステキヌマブ(ステラーラ)を用いたクローン病の治療戦略

名古屋大学 消化器内科 講師 中村 正直 先生

 

クローン病の小腸病変の評価と先端治療

東京医科歯科大学 光学医療診療部 教授 大塚 和朗 先生

 

慶應義塾大学 内視鏡センター 教授 緒方 晴彦 先生が司会をされ、中村先生 大塚先生が上記の演題で講演されました

 

抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)をはじめとする生物学的製剤が実臨床で使用可能となり大腸の手術は減りましたが小腸の手術は減っていません。日本人のクローン病患者さんは80%に小腸に病変がありますが 小腸に病変(特に縦走潰瘍)があるとその後の再燃 手術が多くなります。潰瘍を伴った狭窄も予後不良の兆しです。また症状がなく CRP<0.3の臨床寛解の状態でも小腸の検査をすると約60%に小腸病変が見つかったとする報告もあります。臨床寛解の時に早期に小腸病変の活動性を検知するバイオマーカーとしてLRGがあります。肝細胞 好中球 マクロファージ、腸管上皮において TNFαやIL-22の刺激により発現が亢進します。CRP,CDAIよりも小腸病変の活動性をより鋭敏に反映します。クローン病の患者さんの小腸の絨毛は短縮していますが、ステラーラ投与により8週目で長くなることが確認されています。また抗原提示細胞には影響を及ぼせませんがT細胞に効果を発揮します。ステラーラはクローン病において有効率70% 寛解率50%程度です。大腸にはマクロファージが多くTNFαが多いので 大腸病変に伴う下痢が主態で、狭窄、肛門病変を有する患者さんには抗TNFα抗体が適応です、小腸病変が主態、狭窄を伴う小腸病変を有する患者さんはステラーラが適応です。早期に寛解導入できると長期の予後もよくなります。高齢者や併存疾患が多くて安全性を考慮しなければならない患者さんにはエンタイビオがよいでしょう。これらの治療によりMREで全層性の改善(潰瘍の消退、 壁肥厚の改善)があれば予後がよくなります