2022/6/27 Ulcerative Colitis全国Webセミナー

潰瘍性大腸炎診療で薬剤治療選択に迷ったら

~患者の病態はこうやって把握しよう~

上記の演題で 関西医科大学の教授 長沼 誠 先生が司会をして 浜松医科大学の教授  杉本 健 先生が講演してくれました。

 

自然免疫とは、受容体を介して、侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞をいち早く感知し、それを排除する仕組みです。担当細胞は、主に好中球やマクロファージ、樹状細胞といった食細胞です

獲得免疫とは、感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組みです。応答までにかかる時間は長く、数日かかります。ここを担当する細胞は、主にT細胞やB細胞といったリンパ球です。T細胞はCD4+T細胞とCD8+T細胞とに分けられます。CD4+T細胞はヘルパーT細胞と呼ばれますが均一の細胞集団ではなく いくつかの異なった機能を分担する亜群(サブセット)に分けられ,それぞれ異なったサイトカインを産生します。これまでTh1, Th2, Treg, Tfh, Th17, Th9, Th22が報告されています。CD8+T細胞はキラーT細胞です

クローン病はTh1の関与が強い病態ですが 潰瘍性大腸炎は病態がより複雑でヘテロなサイトカインパターンを示し、Th1、Th2 Th17 の全てが関与する病態です。Th2が主態の病態では好酸球が多く 顕微鏡で観察すると>20HPFとなります GEBOS2に相当します。>50HPFならばステロイドが有効です。Th17が主態の病変では腺管への好中球浸潤を認めGEBOS3に相当します。Th1が主態の病態では好酸球が組織では少ないです。難治性潰瘍性大腸炎のお薬でTh2を強力に抑えることのできるものは現在のところステロイドだけですがエンタイビオもリンパ球だけでなく好酸球の遊走も防ぐことができます。ステロイド依存症例はステロイドが有効な症例ですのでステロイド離脱にはエンタイビオがよいでしょう。採血でリンパ球/単球の比が低く 活動性が高い時はプログラフを選択しています。