2022/7/8 Crohn’s disease Web Seminar

クローン病小腸病変に対するアプローチ

~ウステキヌマブ(ステラーラ)のエビデンスとエクスペリエンスを含めて~

上記の演題で島根大学 第二内科 教授 石原 俊 先生が司会をされ 浜松医科大学 内科学第一 教授 杉本 健 先生が講演してくれました。

 

クローン病において 下痢 腹痛 嘔吐 嘔気 発熱などの症状が出たときには腸管には大きなダメージがすでに加わっています。なるべく無症状のうちに内科治療を開始するとその後の入院 手術を減らすことができます。カプセル小腸内視鏡検査を臨床的寛解(無症状)の時に行い炎症を認めたときは早期に介入したほうがよいでしょう。

クローン病の病態において、IL-12がトリガーになることから炎症が始まり Il-23が慢性炎症を継続させます。このようにクローン病の病態の経過は自然免疫から獲得免疫に移行していきますが ステラーラはIL-12、IL-23を共に抑制し 自然免疫から獲得免疫への移行をブロックします。IL-23はTh17細胞から分泌されますがこの細胞は小腸に多いのでステラーラは小腸病変に対する効果が期待されます。クローン病小腸病変に対し抗TNFα抗体(レミケード ヒュミラ)で治療すると狭窄をおこしてしまうことがありますが ステラーラはIL-17,TGF-βなども抑制するので繊維化を抑え治癒過程でおこる狭窄を防ぐ可能性があります。またクローン病で乱れた小腸絨毛を修復する効果もあります。実臨床でのデータでは抗TNFα抗体2剤不応例が87%を占める患者さん群に対し ステラーラは1年後の有効率が約65% 4年の継続率が44%でした。肛門周囲膿瘍も改善率が60%でした。治験の成績ではバイオナイーブ例と1剤無効例では1年後の成績は同等でした。抗TNFα抗体不応例に対してステラーラ、エンタイビオを投与し比較すると1年後の治療継続率はステラーラ65% エンタイビオ40%でした また小腸病変においてもエンタイビオよりステラーラのほうがより有効でした。

ステラーラのクローン病患者さんへの良い適応

  • 先行バイオ効果減弱
  • 抗TNF-α抗体による乾癬様皮疹が発症した場合
  • Early Crohn(狭窄 瘻孔などの腸管ダメージが少ないクローン病)の第一選択
  • 腸管狭窄でサブイレウスを繰り返す患者さん

肛門病変には抗TNF-α抗体より効果が落ちます