2022/8/24 Ulcerative Colitis全国Webセミナー
作用機序から考える潰瘍性大腸炎の治療戦略
潰瘍性大腸炎治療新時代を読み解く
札幌医科大学 消化器内科 教授 仲瀬 裕志 先生がご司会をされ、慶應義塾大学 消化器内科 教授 金井 先生が講演されました
自然リンパ球は小腸に多く 今後治療のターゲットになるかもしれない 腸管Treg細胞が炎症性腸疾患の病態形成に関わっています 腸内細菌の変容 粘液層が重要 大腸は2層:内層は無菌 小腸は1層 低食物繊維はdysbiosisを引き起こして粘液層を破壊する その結果、透過性が亢進しleaky gutの状態となり免疫細胞の浸潤に至る 程度が軽ければ肝硬変 肥満 程度が大きければ炎症性腸疾患
ことわざで「病は気から」、「医食同源」という言葉があります。脳は自律神経を通じて腸管神経叢に指令を発し腸管免疫に影響を及ぼします。腸管免疫には腸内細菌叢も関与します。腸はSecond Brainとされ腸管には内因性と外因性の神経系が存在し、脳と密接に関係している 内因性神経系の代表がマイスナー神経叢やアウエルバッハ神経叢です 肝と脳と腸管は迷走神経を通じて腸管Treg細胞の機能を維持しています。迷走神経を切断すると神経反射による調節性T細胞の活性化が抑制されるため その後炎症性腸疾患が発症するかもしれません
潰瘍性大腸炎治療において薬剤を決定する要素としては
ステロイド抵抗性の場合は高い確率で寛解導入できる奏功性を重視します。
ステロイド依存性の場合は2次無効と副作用が少ないことを重視します。
発熱などの全身症状がある場合は抗TNFα抗体(レミケード シンポニー ヒュミラ)が適応で 腸管だけの症状の方にはエンタイビオがよい適応です。
実臨床のデータでも副作用は抗TNFα抗体よりエンタイビオの方が少ないです。また糞便移植は炎症が強いときは施行しても効果が落ちますが 他の治療で寛解導入後 糞便移植を行うとその後の寛解維持がより長期になると思われます。
抗IL-6抗体はクローン病治療において有効なデータが出ていましたが治験中に腸管穿孔の副作用が起こったため残念ながら開発中止となりました。