2022/12/5 スキリージインターネットライブセミナー
名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部 准教授 中村 正直 先生
今後のクローン病 小腸病変への期待
~クローン病におけるIL-23/Th-17経路を踏まえて~
上記の演題で名古屋大学の中村先生が講演してくれました。
クローン病は診断時に大腸以外の消化管に80%以上病変があり1/4に腸管狭窄 1/3に肛門病変がすでに合併しています。しかしここ10年は治療進歩により大腸の手術率は低下しています。
Th17細胞は小腸、特に空腸に多く分布し マクロファージは大腸に多く分布しています。クローン病ではTh1細胞が脂肪織、回腸末端にTh17細胞が多く見られます。
クローン病は下痢 腹痛 発熱などの臨床症状がなくても進行する病気ですが バイオマーカーはそのような状態の時 CRP:30%, 便中カルプロテクチン:50%で陽性、カプセル内視鏡:80%で所見があります。モニタリングをしっかり行い手術を防いで中長期の予後の改善に努めなければなりません。小腸の長い狭窄 狭窄前に拡張があると手術でないと直せませんが 狭窄が多くても手術になるわけではありません。クローン病は発病にはIL12、活動期にはIL23が関与しています。IL23はTh1細胞を活性化し炎症性サイトカイン 狭窄を起こす繊維系細胞の放出を促進してクローン病 潰瘍性大腸炎を悪化させます。
重症例ではバルーン内視鏡 CTなどで病状を把握し治療にあたります。中等症症例では再燃の兆候を早期に把握するため カプセル内視鏡、CRP, 便中カルプロテクチン、LRGなどのバイオマーカーでモニタリングします。抗TNFα抗体の登場により大腸病変は手術が減りました、カプセル内視鏡 便中カルプロテクチン、LRGなどの臨床応用によりモニタリング方法は改善しましたが小腸病変は相変わらず難治のままです
スキリージ(リサンキツマブ)はp19に対する抗体であり、IL23をブロックしTh17細胞の経路を抑制します。スキリージのクローン病患者に対する治験の成績は、短期12週でプラセボを内視鏡改善:30% 臨床寛解:20%上回りました。維持期の52週でプラセボとの差はさらに大きくなります。いずれの時期でも生物学的製剤未使用群のほうが生物学的製剤既使用群より良い成績でした。クローン病の活動性が高い患者さんにも有効で その効果は4週間ぐらいで実感でき 免疫調節剤の有無で効果に差はありません。投与後12週で粘膜治癒するとその後予後は改善され 入院 手術のリスクが減ります。維持期の副作用は25%でプラセボより多くなく、特有のものはなくて 上咽頭炎 関節痛などが多い結果でした。治験の成績においてスキリージはステラーラより寛解導入が高いです。