2023/1/18 ゼルヤンツ潰瘍性大腸炎m3Web講演会 その1
エビデンスから考えるゼルヤンツの有効性・安全性
上記の演題で 旭川医科大学の藤谷 幹宏先生がご司会され、東邦大学医療センター佐倉病院の松岡 克善先生が講演されました。
大規模治験の成績では短期の寛解率17% 粘膜治癒30% 反応率60%で 実臨床では反応する患者さんが多い印象です。抗TNFα抗体の治療歴がある患者さんにも有効性が高いのが特徴 効果が迅速で投与後3日目で排便回数 直腸出血の改善を認めます。投与後8週で効果があった患者さんは1年後のそのうち50%弱のかたがステロイドを中止し寛解維持できます。投与開始後1年後に有効であった患者さんの3年後は60%が寛解で70%が有効でした。2ヶ月で効果が不十分でも4ヶ月まで投与するとそうした患者さんの半数が有効になります、25%が寛解になります。トータルすると投与開始後4ヶ月目で約80%の方に何らかの効果を認めます。減量のタイミングは内視鏡で完全粘膜治癒:MES0です。MES1は減量すると再燃しやいです。休薬(投与期間2ヶ月で有効の後)すると50%再燃しますが10mg再投与後70%が反応し 50%が寛解になります。ゼルヤンツを導入したら症状が比較的強い方は8週 穏やかな方は16週で効果判定をします。
安全性では7年経過を追いました。36%の方が4年以上継続して使用し 20%に重篤な副作用が出現し12%が投与中止になりました。重篤な感染症は1.7%人年、帯状疱疹は3%人年 心血管系の副作用、血栓症はほとんど報告されませんでした。長期でみると5mg投与と10mg投与で帯状疱疹発症のリスクは変わりませんでした。重篤な帯状疱疹は少ないです(0.2%人年)発症時期は投与後早期と後期で差はなく アジア人 抗TNFα抗体治療歴のある患者さんが発症率が高かったです。高齢の心疾患や糖尿病など有する白人リウマチ患者では65歳以上で 癌 心血管系の副作用、血栓症の発症リスクが抗TNFα抗体使用の患者さんより高率でしたが 65歳以下では同等でした。東アジア人(日本人 韓国人)の長期(7年)の有害事象の検討では 潰瘍性大腸炎の悪化:18% 帯状疱疹:13%、6%人年ですが重篤な帯状疱疹は やはり低率でした。
日本における市販後調査の中間解析では副作用:24%、重篤な副作用:2%、投与中止:52%でした。投与中止の内訳は効果不十分:26%、副作用:20%、寛解:6%でした。帯状疱疹:6%人年、心血管系の副作用、血栓はほとんど報告されませんでした。
帯状疱疹への対応については 患者さんへのゼルヤンツ投与前の説明が最も重要です。帯状疱疹を発症したら ゼルヤンツは休薬し、抗ウィルス薬で加療し 軽快後 ゼルヤンツを再開します。