2023/7/19 ゼルヤンツ潰瘍性大腸炎インターネットシンポジウム
潰瘍性大腸炎に対するゼルヤンツの安全性と有効性
-最新のReal World Dateを中心に-
上記の演題で 四日市羽津医療センター副院長 兼 IBDセンター長 山本 隆行 先生が講演されました。
Real World Data(RWD)は 目的を決めて前向きにデータを収集するRandomized Control Trial(RCT)とは異なり、カルテ データベース レジストリデータ レセプトデータなどの日常診療のデータを用い、後ろ向きの解析も多いので データの正確性や信頼性はRCTより劣りますが、データサイズが大きく 患者背景も多様な点ではRCTより優れています。
ゼルヤンツの治療成績をRWDから見てみると 8週まで20mg/日で投与し以後は10mg/日に減量する投与方法が多数です。バイオナイーブが30%含まれる患者群では投与後8週での寛解率30%、寛解率はだんだん上昇し1年後には約70%になります。4週までは著明な改善はありませんが4~8週で急に治療成績がよくなり以後少しずつ改善していきます。ほとんどがバイオ製剤無効例、平均で2剤使用後の患者群では1年後の治療継続率60%、2年後50%です。中止理由としては1次無効 効果減弱 副作用です。副作用は感染症 貧血 帯状疱疹です。
副作用が起こりやすいリスクは65歳以上、喫煙者です。効果減弱のリスクは10mg/日、内視鏡検査で粘膜治癒(MES0)未達成、抗TNFα抗体既投与例です。
バイオ製剤とJAK阻害剤の使い分けですが アルブミンが低値の場合はJAK阻害薬、JAK阻害薬は 妊娠中は禁忌なので妊娠の可能性のある女性には原則投与しません。JAK阻害薬の中の使い分けですが ネットワークメタ解析によると有効性はリンヴォック>ゼルヤンツ>ジセレカ、安全性はジセレカ>ゼルヤンツ>リンヴォックです。リンヴォックの有効性はゼルヤンツの使用の有無に関係ありません。ゼルヤンツ リンヴォックはバイオ既投与例にもよく効きます。ジセレカはバイオ使用例でナイーブ例より効果が落ちるので中等症ならば使用の順番はジセレカ→ゼルヤンツ→リンヴォックがよいでしょう。ジセレカは腎排泄なので腎機能の低下した高齢者の使用時に注意が必要です。